2016 Fiscal Year Research-status Report
珪長質マグマ水蒸気爆発の噴火機構と火砕密度流の流動・堆積機構の研究
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16K05576
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
鈴木 桂子 神戸大学, 海洋底探査センター, 教授 (20192544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 和仁 神戸大学, 理学研究科, 講師 (20335417)
巽 好幸 神戸大学, 海洋底探査センター, 教授 (40171722)
鹿野 和彦 鹿児島大学, その他部局等, 教授 (40356811) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マグマ水蒸気噴火 / 伊豆諸島新島 / 段階熱消磁実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
伊豆諸島新島の西暦886年噴火は流紋岩質の羽伏浦火砕密度流の噴出に始まり、大峯火砕丘を形成した後、向山溶岩を流出して終息した。羽伏浦火砕密度流堆積物は堆積構造や定置温度、火山灰粒子の形態などから、噴火の際に浅海で高温のマグマが外来水と接触し、爆発的なマグマ水蒸気爆発が発生したとみなせる。本年度は羽伏浦火砕密度流の噴火に引き続く大峯火砕丘の噴火様式の推移や成長過程などを明らかにすることを目的とし、噴火に与える水の影響を検討した。 大峯火砕丘の構成物はブロック~火山礫サイズの黒雲母流紋岩岩片とブロック状~平板状の火山灰粒子からなり、少量の異質岩片を含む。本質岩片は、発泡度が低く、密度は1.6~1.7 g/cm3で、羽伏浦火砕密度流堆積物の軽石の密度0.8~1.3 g/cm3に比べて大きい。 本質岩片について段階熱消磁実験を行うと350~400℃以下で磁化方向が当時の地球磁場方向に揃う。これは本質岩片が350~400℃以下で定置し、その場でさらに冷却する過程で熱残留磁化を獲得したことを意味しており、ブロックサイズの本質岩片は角柱状に割れ、さらに、割れ目に沿ってほぐれていることがあるという観察事実と調和的である。 以上のことから、大峯火砕丘を構成する堆積物は、高温の溶岩と外来水との爆発的反応、もしくは溶岩の重力崩壊によって発生した火砕密度流の堆積物であることが示唆される。羽伏浦火砕密度流堆積物もマグマ水蒸気爆発起源と考えられているが、定置温度は300℃以下で、大峯火砕丘の方が高い。これは大峯火砕丘の噴火では水の関与が少なくなったことを示唆する。それでも火砕粒子が水蒸気に触れて湿っているときは、急傾斜を保持して火砕丘を形成することもあるということが新たに推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究として、新島におけるマグマ水蒸気噴火の噴出物を調査したが、当初予想していたのは、羽伏浦火砕流堆積物は、水の影響を強く受けたマグマ水蒸気噴火で、その後徐々に水の影響が減少すると推定していたが、羽伏浦火砕密度流の噴出後の大峯火砕丘の形成時においても水の影響が強く残っていることが明らかになった。しかし噴出物の堆積温度から考えると噴火に与えた水の影響は、羽伏浦火砕密度流で最大で、大峯火砕丘形成時には、やや衰えていたと推定される。噴火様式だけからの判断とは異なる結果が得られたことは、海域におけるマグマ水蒸気噴火の噴火様式を復元する上で、重要な結果が得られたとみなせる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、1)向山火山(東京都新島)、2)姫島火山群(大分県姫島)、3)天上山火山(東京都神津島)を取り上げる予定である。向山火山と姫島火山群は極めて浅い海域から陸上へと成長した火山であり(一色、1987)、天上山火山は,海域に存在するが陸上火山である. いずれの火山噴出物も流紋岩質で、向山火山は軽石を多く含む(Nakaoka and Suzuki-Kamata, 2014).マグマ水蒸気噴火はマグマが発泡していると起こり難いとする見解があるが、向山火山は火砕粒子が発泡しているにもかかわらずマグマ水蒸気噴火が起こっているとされていることから、発泡していない天上山火山や姫島火山群の事例と比較することで噴火機構解明の手がかりが得られる可能性がある. 姫島火山群のマグマ水蒸気噴火噴出物は特に岩片が卓越して居り、火山岩塊火山灰流(ブロックアンドアッシュフロー)に似た特徴を示すと共に、同質の溶岩上に噴出している例もあるため、ほかの事例とは異なる噴火機構と火砕密度流の流動定置機構が想定される.また、フラクタル解析を用いて破砕における破壊エネルギー密度や破壊強度を求める予定である.
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Causes of Carryover |
段階熱消磁実験のために使用する予定であった石膏やドリルビットなどの消耗品に関して、使用量が予定していたよりも少なかったため、当該年度の所要額が予定より少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度に段階熱消磁実験を行う予定の新島で採取予定の試料のための石膏やドリルビットなどの消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)