2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K05592
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
田中 源吾 熊本大学, 沿岸域環境科学教育研究センター, 研究員 (50437191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 晴良 九州大学, 総合研究博物館, 教授 (10181588)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カンブリア紀 / 眼の化石 / 眼の進化 / 例外的に保存の良い化石 / 先カンブリア紀 / 中国 / ぜん虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
現生する動物門に限れば,現生生物を用いた分子時計によって推定された年代をもとに,それぞれの動物門の最古の化石記録から,最後の共通祖先の眼が出現した時期を推定する方法は,強力な手法であることに間違いない.それによれば,6億5600万年前~6億年前頃には,眼を持っていた動物が存在していた可能性を示唆する.しかし,これまでの化石記録に基づくと,5億2100万年前の三葉虫の複眼の化石が最古の眼である. 分子時計を用いた各分類群の分岐年代は,化石記録によってキャリブレーションされるから,化石証拠は極めて重要である.さらに,地質学的タイムスケールで考えたとき,現在では絶滅した動物門が存在していた可能性も捨てきれない.事実,8億年前~7.5億年前には淮南生物群と呼ばれる様々なかたちを持つ2cm以上の蠕虫の化石が中国で報告されている.これらの蠕虫は遊泳性,表在性,埋在性のものなど様々な生活様式を持っていたと考えられており,さらに消化管などの軟体部も保存されている.したがって,実際に淮南生物群の標本を観察することで,眼の有無も確認できると考えられる. そこで,本年度は,研究代表者(田中)が淮南生物群の標本調査と野外調査を行った.中国の研究協力者の周 保春博士(上海科技館)とともに,上海科技館および八公山地質博物館に保管されている化石標本の観察を行った.あいにく標本の表面には剥離を防ぐための樹脂が塗られており,標本の眼の有無については確認できなかった.一方,周博士と共に,八公山周辺の地質調査を行い,先カンブリア系からカンブリア系に至る一連の地層を発見した.淮南生物群は発見できなかったものの,カンブリア紀最下部の砕屑岩から,微小有殻化石群の密集層を発見した他,カンブリア紀前期を特徴づける三葉虫化石も発見した.本地域は先カンブリア時代・カンブリア紀前期の生物相を観察するのに絶好の産地であると確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
八公山地質博物館に保存されてある淮南生物群の化石群は表面が樹脂で塗られており,研究に適さないことが分かった.また,上海科技館に保存されている標本は,小さな個体であり,個体数も十分とは言えなかった.淮南生物群の発見地は明らかにされていないが,八公山周辺の地質調査の結果,先カンブリア時代とカンブリア紀の連続露頭を確認できた.さらに,周博士の地元ということもあり,淮南生物群の産地をある程度絞り込めた.来年度は羽毛恐竜の眼の化石で,中国東北部を調査するが,その際に再び,八公山周辺を調査し,淮南生物群の’再発見’を目指したいと思っている.一方,来年度研究予定の羽毛恐竜や絶滅した白亜紀の鳥類については,周博士の所属する上海科技館に標本が数点あることを確認した.さらに,八公山調査と平行して,中国東北部の羽毛恐竜の発見地の博物館とも連絡を取り合い,いくつかの重要な標本があることも確認した.さらに北京自然史博物館の王博士とも周博士を通じて連絡を取り,中国産の保存のよい化石について,共同研究することになっている.来年度は,夏季休暇を利用して,淮南生物群の調査を行うとともに,冬期休暇を利用して,中国東北部での調査も行う予定である.このように,海外研究によって,さらに共同研究者が増え,研究の生産性がたかまったことも,今年度の収穫であった.また,再来年度に行う予定のモロッコ産の三葉虫の視覚に関する研究については,いくつか標本が手に入り,モロッコおよびドイツの研究者と共著論文として,国際学術誌に出版された.また,日本産の甲殻類に関する記載も国際誌に掲載された.このように,研究業績面でもおおむね順調に研究は遂行できている.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,まず本年度得られた研究成果を,論文として投稿準備することを第一目標とする.本年度は淮南生物群の実像には迫れなかったものの,共同研究者によって,来年度の羽毛恐竜や絶滅鳥類など,例外的に軟組織が保存されている可能性のある標本にいくつかたどり着くことができた.このうち上海科技館に保管されている絶滅鳥類の標本について,眼の化石の一部の採集が許可されたので,アルコール殺菌したしたデザインナイフと解剖針,および面相筆をもちいて,博物館の収蔵庫内で標本を抽出した.この標本については現在解析中であるが,成果が出次第,論文を作成し,国際学術誌に投稿する.これを第一目標とする.今年度達成できなかった,淮南生物群の標本の件については,淮南生物群の発見者が高齢であること,中国国内の大きな博物館には本研究目的に合致する標本が保管されていないことがわかった.しかしながら,今年度の野外調査で,ある程度産地を絞り込むことができたので,来年度の夏季休暇に集中的に野外調査を行うことで,この課題は解決できると見込まれる.不測の事態に備え,業者から淮南生物群よりは時代は若くなるものの,先カンブリア時代のぜん虫か植物か不明の標本を入手している.そこで,その標本を解剖学的に解析することによって,カンブリア爆発以前のぜん虫様の生物に,眼があるのかないのか,判明することが期待できる.また,冬期休暇の際には中国東北部の羽毛恐竜の産地で標本を調査し,必要ならば博物館の館長等の許可を得て,眼の部分の標本の一部の採集の許可をいただき,日本に持ち帰って詳細な形態学的調査を行う.同時に化学的分析を専門の先生にお願いし,周博士や博物館の館長,共同研究の方々と論文作成に向けての調整を行う.
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Causes of Carryover |
本年度は,中国での標本観察・野外調査が予察的な段階で終わった(事前に上海科技館の周博士よりメイルで標本の状態や画像を送ってもらい,旅程を計画した)ので,予定より調査の期間を短くした.結果として,来年度の夏季休暇の際に長めに中国で野外調査を行う必要がでてきたため,今年度,旅費に計上した残額分を次年度の調査旅費に充てる必要が生じた.次年度は2週間ほどかけて前年度調査できなかった露頭の再調査を行う.また,29年度より所属機関を熊本大学から金沢大学に変更になったため,中国(上海)への航空旅費が多くかかることも,本年度の残額を充てないと次年度の調査がスムースにいけない理由の一つとなっている.また冬期休暇の際には,次年度の計画書どおりに中国東北部の羽毛恐竜の産地において,野外調査および博物館においての標本調査を実施する予定である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
金沢~中部国際空港を経由して上海浦東空港までは,格安航空券を利用しても往復5万円ほどかかる.上海から周博士と和階号(新幹線)を用いて合肥市に向かうのに約1万円の交通費,レンタカー(一日7000円)を10日借りて7万円がかかる.そのほか,標本運送費などを考慮すると,約15万円が必要である.宿泊費等も必要であるが,それは次年度の科研費の一部を使用する予定である.
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Carboniferous ostracods from central Honshu, Japan2018
Author(s)
Christpher Stocker, Toshifumi Komatsu, Gengo Tanaka, Mark Williams, David Siveter, Callorine Benett, Simon Wallis, Tatsuo Oji, Takumi Maekawa, Masatoshi Okura, Thijis Vandenbroucke
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Journal Title
Geological Magazine
Volume: 155
Pages: 98-108
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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