2016 Fiscal Year Research-status Report
中緯度地域における古生代末の大量絶滅からの生物多様性の回復
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16K05598
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
重田 康成 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, グループ長 (30270408)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 三畳紀 / 絶滅 / 回復 / 生物多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
中緯度地域における古生代最末期の大量絶滅事件とその後の回復過程を理解するために、平成28年9月28日~10月8日まで、ロシア・プリモーリエ州南部地域において、三畳系の地質調査を行なった。高精度のルートマップと柱状図を作成し、地質構造、岩相層序、堆積相、化石の産状について詳細な観察を行い、岩石・化石試料の採集を行った。 アンモナイトによる高精度年代層序に基づき、ウミユリ類の層序分布を詳細に追跡した結果、回復のタイミングについて詳細なデータが得られた。ウミユリ類の化石は、三畳紀前期のインドゥアン期やオレネキアン前期では極端に少ないが、オレネキアン後期になると、豊富になることを確認した。特に、浅海の陸棚相からは多産する。茎片の形状から、これらは単一種のものと考えられる。ウミユリ類は、古生代に大繁栄したが、古生代末の大量絶滅で多様性が極端に減り、再び繁栄するのは三畳紀以降であると言われている。今回の調査から、ウミユリ類は種多様性は低いものの、オレネキアン後期になると浅海域で大繁栄していたことがわかった。オレネキアン前期と後期の境界付近では、海底の貧酸素環境が改善されるなど海洋環境に大きな変化があったことが知られている。ウミユリ類の繁栄は、このような海洋環境の変化と関係するものかもしれない。 南三陸にもウミユリ類の化石を豊富に含む三畳系・平磯層が分布している。これまで堆積年代が不明であったが、産出したアンモナイトを詳細に検討した結果、年代がオレネキアン後期であることがわかった。南三陸とプリモーリエでの観察から、三畳紀前期のオレネキアン後期には、パンサラッサ海西部の低緯度から中緯度の広い地域の浅海域にウミユリ類が繁栄していたことがわかり、成果を学術雑誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、これまでロシア・プリモーリエ州南部地域において三畳系の地質調査を行なった経験があり、その時得られた地質に関する基礎データが今回の調査地域の選定に大いに役にたった。調査では、ロシア科学アカデミー極東地質研究所の協力を得て、野外調査に適した車の手配や運転手の確保、熟練した調査補助員が確保できた。また、現地調査の進行具合は天候に大いに左右されるが、幸い天候にめぐまれ、順調に調査を遂行することができた。採集した岩石・化石資料のロシア国外への持出しについては、所定の機関に申請し、許可を得なければならない。幸い、手続きが順調に進み、年度内に資料を日本に運搬し、国立科学博物館において化石資料の剖出作業を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、野外調査として、ロシア・プリモーリエ州南部地域において、三畳系の地質調査を行う。高精度のルートマップを作成し、地質構造、岩相層序、堆積相、化石の産状について詳細に調べる。特に、大型化石の種構成や各種の層序分布を明らかにするため、すべての層準から大型化石の採集に努める。室内研究としては、地質調査のデータを総合的にとりまとめて岩相層序を把握すると共に、採集した化石の剖出作業や分類学的研究を進める。なお、何らかの理由で野外調査が困難となった場合は、ロシア科学アカデミー極東地質研究所や国立科学博物館に保管されている化石資料を用いて、化石の分類学的研究や生層序学的研究を行う。 平成30年度は、ロシア・プリモーリエ州南部地域において、これまでの地質調査の補足調査を行い、岩相層序、堆積相、大型化石の種構成や各種の層序分布を明らかにする。採集した化石の剖出作業を行うと共に、地質調査のデータを総合的にとりまとめて、各化石の層序分布を把握する。国内外の研究機関を訪問し、タイプ標本や参考標本の観察、写真撮影、型取り作業を行い、採集した化石の分類学的研究を進める。本研究の成果を、関連する学会や集会において発表すると共に、学術雑誌などで公表する。
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