2017 Fiscal Year Research-status Report
中緯度地域における古生代末の大量絶滅からの生物多様性の回復
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16K05598
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
重田 康成 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, グループ長 (30270408)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 三畳紀 / 絶滅 / 回復 / 生物多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
中緯度地域における古生代最末期の大量絶滅事件とその後の回復過程を理解するために、平成29年10月10日~10月21日まで、ロシア・プリモーリエ州南部地域において、三畳系の地質調査を行なった。高精度のルートマップと柱状図を作成し、地質構造、岩相層序、堆積相、化石の産状について詳細な観察を行い、岩石・化石試料の採集を行った。また、標本調査のため、平成29年11月28日~11月30日まで、極東地質研究所(ウラジオストック)を訪問した。 アンモナイトによる高精度年代層序に基づき、巻貝類のベレロフォン類の層序分布を詳細に追跡した結果、絶滅のタイミングについて詳細なデータが得られた。ベレロフォン類は、古生代に大繁栄した巻貝類の1グループで、古生代末の大絶滅事件を生き延び、三畳紀前期に絶滅したことが知られている。プリモーリエ州南部地域では、インドゥアン期に下部外浜で堆積した砂岩中に、2種類のベレロフォン類が多産することを確認した。スミシアン(オレネキアン前期)前期になると、浅海堆積物中からはベレロフォン類が産出せず、1種のみが内側陸棚など下部外浜よりも深い環境で堆積した砂岩層中から希に産出した。スミシアン中期以降の地層からは、いかなるベレロフォン類も確認できなかった。今回の調査から、ベレロフォン類はインドゥアン期には浅海域に生息しており、スミシアン前期には浅海域から消え内側陸棚などに生息していたが、スミシアン中期以降は姿を消すことがわかった。スミシアン期とスパシアン境界(オレネキアン前期と後期の境界)付近では、大量絶滅事件が記録されているが、今回の調査から、ベレロフォン類はこの絶滅事件の前に絶滅したことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、これまでロシア・プリモーリエ州南部地域において三畳系の地質調査を行なった経験があり、その時得られた地質に関する基礎データが今回の調査地域の選定に大いに役にたった。調査では、ロシア科学アカデミー極東地質研究所の協力を得て、野外調査に適した車の手配や運転手の確保、熟練した調査補助員が確保できた。また、現地調査の進行具合は天候に大いに左右されるが、幸い天候にめぐまれ、順調に調査を遂行することができた。採集した岩石・化石資料のロシア国外への持出しについては、所定の機関に申請し、許可を得なければならない。幸い、手続きが順調に進み、年度内に資料を日本に運搬し、国立科学博物館において化石資料の剖出作業を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、ロシア・プリモーリエ州南部地域においてこれまで採集したアンモナイト、二枚貝、巻貝化石の同定のため、ロシア・サンクトペテルスブルグの博物館を訪問し、タイプ標本や参考標本の観察、写真撮影、型取り作業を行い、採集した化石の分類学的研究を進める。また、これまで行なった地質調査のデータを総合的にとりまとめて、各化石の層序分布を把握し、中緯度地域における古生代末の大量絶滅からの生物多様性の回復についての考察を深める。さらに、本研究の成果を、関連する学会や集会において発表すると共に、学術雑誌などで公表する。
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