2016 Fiscal Year Research-status Report
カンラン石―メルト間のCaO分配の含水量依存性の解明と沈み込み帯のマグマへの応用
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16K05601
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
菅原 透 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (40420492)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マグマ / カンラン石 / 元素分配 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はカンラン石―メルト間のCaO分配のH2O量依存性に着目した含水量計を新たに構築し,これを秋田駒ケ岳火山の玄武岩に適用してマグマの成因を考察することを目的としている.本年はガス圧装置を用いた含水系の相平衡実験と申請者が過去に行った実験試料を用いたEPMA分析での二次蛍光効果の確認を行った. 相平衡実験では玄武岩組成のガラスを酸化条件と還元条件で合成した試料,ならびにカンラン石を飽和させる目的でそれぞれにSan Carlosカンラン石の粉末を添加した試料の合計4種類の出発組成に対してH2O飽和の条件下で行った.1500気圧,1100℃で24時間保持したのち,急冷し,実験生成物をEPMAで観察,分析した.カンラン石粉末を添加しない場合にはカンラン石は晶出せず,また添加組成ではカンラン石の組成が平衡に達しておらず,CaOの分配係数を求めることができなかった. EPMAによる微小カンラン石結晶のCaO分析における二次蛍光効果を確認する目的で,Sugawara (2001)で報告した1気圧の相平衡実験試料を用いてEPMAとLA-ICPの測定と分析値の比較を行った.カンラン石の結晶サイズは10-30μmであり,CaO量は0.2-0.9wt%の範囲にわたる.EPMAとLA-ICPの分析値の差はマトリックスのCaO量が増加するとわずかに増加するものの,その大きさは小さく,10wt% CaOではカンラン石のCaOの差は平均で0.1wt%であった.以上のことから,EPMAによる微小カンラン石結晶中のCaO分析で生ずる二次蛍光効果はカンラン石の組成変動幅と比較して小さなものであり,マトリックスのCaO量が8wt%程度以下であればEPMAにより分析可能であることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の含水系の相平衡実験は保持時間が短いために平衡に達せず,含水量計を構築するために必要なデータを得ることができなかった.しかしながら,EPMAとLA-ICP分析によるカンラン石のCaO量はほぼ一致することから,二次蛍光効果による過剰見積もりは小さいと判断して良いことがわかった.このことは,既報の実験データをそのまま用いた分配の考察が可能であることを示唆するものである.相平衡実験は失敗に終わったものの,分析からは次のステップに進むための重要な結論が得られており,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) カンラン石が析出しやすい条件となるように実験組成を再検討する.また保持時間をより長くした相平衡実験を行う. (2) 最近10年間に報告された含水計相平衡実験データをコンパイルし,カンラン石-メルト間のCaO分配の含水量依存性について調査する.また,カンラン石飽和条件でのメルトMgOと温度,圧力,含水量の関係のモデルを更新する. (3) 秋田駒ケ岳の後カルデラ期の玄武岩を採取し,岩石記載,鉱物組成の分析を行う. 分析結果に対して(1)のモデルを適用し,マグマの分化過程と含水量の変化について考察する.
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Causes of Carryover |
昨年度の相平衡実験では24時間の保持時間では平衡に到達しなかった.実験組成や方法を再検討する必要性が生じたために,実験に用いるAu-PdやPt容器のための予算が余ることとなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は保持時間をより長くした実験を計画している.そのためのAu-Pdチューブを購入予定である. また,カンラン石のLA-ICP分析については外注することも計画しており,そのために予算を使用する予定である.
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