2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05613
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
奥平 敬元 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (20295679)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 内陸地震 / 下部地殻 / 変形機構 / 斜長石 / マイロナイト / 破壊 / 粒径依存クリープ |
Outline of Annual Research Achievements |
地震発生領域直下の下部地殻上部における延性剪断帯の発生・発達過程は,内陸地震の発生において本質的に重要である.本研究では,天然の変形岩試料の解析を通して,下部地殻上部での延性剪断帯の発生・発達過程の解明を目的としている.年度前半では,下部地殻の主要構成鉱物である斜長石と輝石の細粒化過程・変形機構を明らかにするため,ノルウェー北部ロフォーテン諸島およびベステローデン諸島において地質野外調査と岩石試料(主に斜長岩起源のマイロナイト)の採取を行った.年度を通して,採取された変形岩に対して,SEM-EDS,WDS,EBSDなどを用いた構造地質学的・岩石学的解析を,大阪市立大学,京都大学,産業技術総合研究所などにおいて行った.その結果,一部の斜長岩マイロナイトにおいては,地震に起因する動的破壊により形成されると考えられる粉砕作用(pulverization)が認められることが明らかとなった.粉砕作用の結果形成される粉砕岩は,見かけの間隙率が上昇するため,下部地殻における地殻流体の流路となり得る.実際,粉砕岩には,加水反応の結果形成された含水鉱物が認められ,それら鉱物を用いた熱力学的解析から,地殻下部条件(700℃, 700 MPa)での加水作用が確認された.このような下部地殻条件で形成された粉砕岩の報告例はこれまでなく,世界初の記載となった.これらの研究成果によって,下部地殻における剪断帯の形成および地殻流体の循環を考察するために必要な極めて重要な知見を提供することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の研究実施計画では予定していなかった,ノルウェー北部ロフォーテン諸島およびベステローデン諸島における地質野外調査と岩石試料の採取を,博士研究員とともに行った.また,既存及び本年度の採取試料を用いて,変形組織観察,鉱物化学組成,結晶方位解析を行い,その結果を国際学術雑誌である「Geology」に投稿した(現在査読中).このように本課題研究は,順調に進捗している.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も継続して,変形組織と鉱物化学組成の総合的な解析を主にSEM-EDSおよびWDSを用いて行う.鉱物の結晶方位解析は,産業技術総合研究所において,連携研究者の重松紀生主任研究員の協力を得ながら行う.また,JAMSTEC高知コア研究所においてmicro-SIMSを用いた斜長石の酸素同位体組成の分析も行う予定である.これら解析の結果は速やかに学術論文としてまとめ,国際学術雑誌へ投稿する予定である.また,これまでの研究成果を,12月に開催されるアメリカ地球物理学連合秋季大会において,大学院生・博士研究員とともに発表する.
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では博士研究員の国外旅費を計上していたが,この経費が他の科研費(新学術領域)から支出されたため,次年度使用額が発生した.次年度では研究成果発表を行うため,アメリカ地球物理学連合秋季大会(ワシントンD.C.)に参加する予定である.当初の研究計画では,学会参加者は研究代表者と大学院生1名の計2名を予定していたが,博士研究員1名も同行予定となったため,計3名の国外旅費に研究経費を使用する予定である.
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Research Products
(7 results)