2017 Fiscal Year Research-status Report
サブミクロンエアロゾル生成・成長における塩基性有機窒素化合物の役割の解明
Project/Area Number |
16K05620
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
松本 潔 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (60373049)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | エアロゾル / 有機窒素 / ガス / 生物利用可能態窒素 / アミン化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
山梨大学甲府キャンパス(甲府市;都市大気)及び富士山科学研究所実験林圃場(富士吉田市;森林大気)におけるエアロゾル及び塩基性ガス成分試料の採取を、昨年度に引き続き行なった。採取された試料は、超純水で抽出・回収後、全窒素濃度、無機態窒素成分濃度を定量し、有機態窒素濃度を求めた。本年度は新たにこの他、北海道利尻島(海洋大気)で採取されたエアロゾルについても、分析の対象とした。 昨年度と同様、有機態窒素がエアロゾル中全窒素の10~20%程度を占めていること、ガス相に大気中有機態窒素の20~50%が存在していることが、本年度得られたデータからも確認された。 本年度では特に、エアロゾル中有機態窒素の生成メカニズム(=粒子化メカニズム)の考察を深めた。利尻島で採取されたエアロゾル試料からは、非海塩起源硫酸イオンと硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、アンモニウムイオンのバランスから求められる酸性度と有機態窒素の濃度に相関関係があり、しかも当量比で両者は1:1の関係に近いことが確認された。類似の傾向は甲府市で採取されたエアロゾル試料からも確認されており、有機態窒素の多くが塩基性画分であり、酸塩基反応による塩生成を経て粒子化するプロセスが示唆された。 一方で、ガス相及びエアロゾル中有機態窒素の分配についても考察を深め、ガス相とエアロゾル相をあわせた大気中有機態窒素総量が春季から夏季に増大し、森林内における生物活動にその起源を求めることができること、そしてガス/エアロゾル分配が夏季にエアロゾル側にシフトすることから、光化学反応による硫酸などの酸性成分の生成が夏季に卓越し、これらとガス相中の塩基性有機態窒素成分が反応して粒子化するプロセスが示唆された。 この他、昨年度より引き続きエアロゾル及びガス相中アミンについても分析を行ない、季節的なデータを蓄積した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エアロゾル及びガス試料の採取は予定通りに行なわれた。また、エアロゾル中有機窒素の定量、ガス相中の塩基性有機窒素の定量に関しても、予定通り行なわれた。エアロゾル及びガス相中アミン化合物の定量法も、ほぼ確立した。これらの項目については概ね予定通りの進捗状況となったが、エアロゾル中の塩基性有機態窒素の定量に関しては、定量法の検討の段階でブランク値が高いなどの問題があり、実サンプルに適用できる段階でなく、遅れている。一方で有機態窒素化合物のガス/エアロゾル分配やエアロゾル中の有機態窒素成分の生成メカニズムに関しては、フィールドで得られたサンプルの分析結果の解析より、上記概要に記したとおり興味深い知見が得られており、論文として発表することもできた。従って上記の評価区分とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
当面の課題は、エアロゾル中の塩基性有機態窒素の定量法の確立である。ブランク値の低減など、実サンプルへの適用のためにクリアしなければならない問題点があり、これを解消するための試行実験を重ね、さらに回収率などの条件検討を行った上で、既に採取済みのエアロゾルサンプルに適用し、データを取得する。アミン化合物の分析も、手法の確立に時間を要したため実サンプルの分析が遅れている。分析をスピーディに進め、データを蓄積する。既に分析が順調に進んでいるエアロゾル中有機態窒素およびガス相中塩基性有機態窒素の分析も引き続き進める。これらのデータの蓄積が概ね進むと期待される本年度後半には、データの解析を今以上に深め、サブミクロンサイズエアロゾルの生成・成長に及ぼす塩基性有機態窒素化合物の役割について考察をまとめる。
|
Causes of Carryover |
(理由) エアロゾル中の塩基性有機態窒素の定量法の検討については、本年度に十分確立させることができなかった。この作業は、一つ終えるごとに次の実験条件を検討する必要があり、試薬等の実験消耗品もその都度必要なものを購入することになる。従って、この作業に必要な実験消耗品の経費の一部を次年度に使用する必要が生じた。 (使用計画) エアロゾル中塩基性有機態窒素の定量法の検討に必要な実験消耗品の経費に当てる予定である。
|
Research Products
(2 results)