2018 Fiscal Year Research-status Report
拡張MHDモデルを用いた磁気ヘリシティ入射によるプラズマ電流駆動の理論構築
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16K05627
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
廣田 真 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (40432900)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 拡張電磁流体力学 / 磁気ヘリシティ / テイラー緩和 / 磁気リコネクション |
Outline of Annual Research Achievements |
磁化プラズマの緩和状態を予測するテイラーの理論は、磁場閉じ込めプラズマや太陽表面プラズマなどで観察される磁場構造をおおまかに説明できる理論として重要である。ただし、このテイラー緩和状態は磁気ヘリシティ(磁力線のねじれを表す物理量)よりもエネルギーが速く散逸するという単純な仮説のもとに導かれており、どのような場合にどの程度この仮説が成り立つのかは明示化されていない。特に、磁気ヘリシティとエネルギーを外部から供給し続けることで、どのような緩和状態が維持できるのかは実験的に興味深い問題であるが、磁気リコネクションを介した乱流および散逸の過程は複雑であり、数値シミュレーションに頼った解析が必要となる。 このような数値解析ではしばしば「プラズマ圧力をゼロとしつつ、密度を一様」と近似したゼロベータMHDモデルが用いられてきた。しかし、この近似は磁場が弱い場所では局所的に破綻する上に、エネルギーが保存しない系となってしまい、正確な物理を議論するには限界がある。一方で、圧縮性のMHD方程式をそのまま解くと、プラズマ周辺部の密度が真空と呼べるほど薄くなり、MHDモデル自体も破綻してしまうという問題がある。本研究では、特にこの周辺部において2流体効果を含んだMHD方程式へと拡張することが有効であると考え、拡張MHDモデルの数値解析を行っている。 特に電子慣性効果を含んだ拡張MHDでは、真空領域も数値的に安定に解けることがわかった。しかし、電子慣性を考慮するとエネルギーを保存するような境界条件を課すことが困難であった。これに対し、ゲージ条件をうまく選ぶことで数値的にも実装可能な境界条件を導くことに成功した。さらに、電子慣性効果により、磁気ヘリシティの代わりに「正準ヘリシティー」が外部コイルの誘導電圧によって入射されることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
電子慣性効果を考慮した拡張MHD方程式の定式化はすでに行われていたが、具体的にこれを数値的に解く上で、境界条件の与え方が自明でないことに気付いた。特に電流が壁を通過してしまうと、エネルギーが保存しなくなるため、壁に垂直方向の成分をゼロにするような境界条件を課すのが数学的に困難であった。これについては解決の見込みはたったので、今後数値計算は行えるようになった。 また、利用している大型並列計算機が4月から新しいシステムに置き換えられ、これまで行っていたOpenMPによるスレッド並列では大規模な計算ができなくなってしまった。これについては、一般的なMPI通信によるプロセス並列ができるようにコードを書き換えている所である。
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Strategy for Future Research Activity |
電子慣性効果を含めた拡張MHDの定式化は境界条件まで含めて解決できたので、こうした二流体効果によって緩和現象やヘリシティの保存則がどのように影響を受けるのかを調べていく。特に、磁気ヘリシティではなく、「正準ヘリシティー」が保存するはずなので、古典的なテイラー緩和理論との違いに着目する。
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Causes of Carryover |
今年度はスパコンシステムの変更に伴い、予定外に大規模な計算ができなくなり、コードの書き換えに手間取ってしまった。また、電子慣性効果を数値的に扱うことに困難もあったため、新しい成果を発表することができなかった。これについては解決の見込みがたったため、次年度でまとめて成果を発表する。
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Research Products
(1 results)