2017 Fiscal Year Research-status Report
大気圧N2-CF3Iガス放電における負イオン挙動の解明と有機材料用除電器への応用
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16K05628
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
池畑 隆 茨城大学, 理工学研究科, 教授 (00159641)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 静電気除電 / コロナ放電 / イオナイザ / CF3I / イオン輸送 / 質量分析 / 有機材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、(1)N2-CF3I混合ガスの放電で生成されるイオン種を質量分析で明らかにする。(2)大気圧下の正負イオンの輸送特性を実験と理論の両面から検討する。(3)CF3I由来のイオンが有機材料表面に付着・蓄積した場合の物性への影響を検討する、の3項目である。 (1)既存の飛行時間型質量分析装置にコロナ放電イオンおよび反応ガスを微量供給するための差動排気を含めた試料導入系を設計した。設計が遅れて年度内の発注・納品が間に合わず、30年度発注となった。装置制作中の補完実験としてCF3I生成イオンのレーザーイオン化質量スペクトルを測定することを計画している。すでに稼働中のシステムのため短時間でデータを取得できる。本実験の参考になる。 (2)N2-CF3I混合ガスを用いたイオナイザ除電の研究は、前年度まで大気圧で行われたが、イオンの輸送特性をよりよく理解する目的で気圧を1~0.01気圧の範囲で変化させた。その結果、0.1気圧ではコロナイオン電流が大気圧の約100倍に増加し、除電時間が1/100に減少した。同時に被除電物の再帯電により大振幅の電位振動(静電気障害の原因)を生じた。しかし電位振動はイオナイザ周波数でコントロールできることが分かった。結果として最適除電条件を見いだすことができた。輸送モデルの検討結果から、低気圧でのイオン電流の増加は、気体密度の減少による移動度の増加とコロナ放電部の電力増加の両方に起因することが分かってきた。以上の成果はIEEE Transaction of Industry Applicationnに掲載された。 (3)の有機材料への影響調査では、供試材料を検討しペンタセンを選択した。薄膜作製用蒸着装置の目処は立ったが、供試薄膜の作製は次年度の課題である。イオン照射加速度試験は実施可能の状態にあるので、試料を作成したXPS分析等に進みたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題(1)で既存の質量分析装置に接続するコロナイオン導入装置(差動排気システム付)の製作が遅れている。設計には目処が立ったので製作を急ぐ。(3)の有機材料への影響調査では、材料の選択と供試試料として選んだペンタセン蒸着膜の作成に手間取った。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)については装置の製作を急ぐ。補完実験としてCF3I由来イオンのレーザーイオン化質量スペクトルを測定することを計画している。すでに稼働中の分析システムのため短時間でデータを取得できると考えられる。本実験の参考になる。 (2)は順調に進んでいる。 (3)はペンタセンの蒸着膜を作製し、コロナイオン照射加速度試験を急ぐ。表面の物理化学的変化の分析法は検討課題であるが、先行研究で報告例のあるXPSによる表面分析を考えている。 30年度が最終年度であるが、(3)の試料の表面分析、影響評価などで時間が不足する場合には、31年度も研究を継続する予定である。
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Causes of Carryover |
既存の質量分析装置に接続するコロナイオン導入装置の設計製作が遅れ、年度内の発注納品が間に合わなかった。設計には終了しているので発注を急ぐ。
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Research Products
(5 results)