2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of degradation mechanism of polymers in thermal oxidation and gamma-ray irradiation by luminescence spectroscopy
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16K05644
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
中田 宗隆 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40143367)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ルミネッセンス分光法 / 熱酸化劣化 / 放射線劣化 / 放射線履歴検知 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子を製造する際には架橋剤が使われる。もしも、架橋剤が熱酸化劣化を起こすと、製造した高分子の劣化の原因となる可能性がある。そこで、熱分析法(TG-DTA測定)、紫外可視分光法、加熱拡散反射赤外分光法を用いて、イミダゾール系の架橋剤V6の熱酸化劣化の機構を調べた。熱分析法には示差熱・熱重量同時測定装置を用いて、室温から350 ℃まで、窒素中または酸素中で測定した。その結果、試料の融点が181 ℃であることがわかった。また、350 ℃までの加熱により、窒素中では試料はすべて蒸発したが、酸素中では9%の減少にとどまった。また、融点よりも高温でDTA曲線が上昇して、269 ℃で発熱ピークを観測した。これらの結果より、酸素中では酸化反応または重合反応が起こると考えた。 窒素中で加熱した試料の紫外可視吸収スペクトルは、スペクトル加熱前後で大きな変化がなかった。一方、酸素中では579 nm と539 nmに吸収バンドが観測された。したがって、酸素が関与して共役二重結合の伸びた化合物が生成したと考えた。また、加熱拡散反射赤外スペクトルを測定した。ガンマ線照射した試料を200 ℃まで昇温すると、加熱前と比べて、アミノ基のN-H伸縮振動のピークが高波数側にシフトした。これは試料が融解したためであると考えた。さらに200℃で加熱を続けると、窒素中ではスペクトルに大きな変化は見られなかったが、酸素中ではアミノ基のN-H伸縮振動のピークの強度が大きく減少した。以上の結果から、酸素中で200 ℃でV6を加熱すると、酸素がアミノ基の水素を引き抜いて共役二重結合の伸びたイミノ化合物ができ、生成したイミノ化合物が200 ℃より高温の加熱によって重合反応を起こすと考えた。 研究期間全般を通して、有機高分子、無機高分子の放射線劣化、熱酸化劣化の機構を分子レベルで解明することができた。
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