2018 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive formulation of transport properties of various liquids in various states
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16K05646
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大鳥 範和 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20272859)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子動力学計算 / 輸送係数 / 自己拡散係数 / 粘性率 / ストークス-アインシュタインの関係 / 液体 / 多原子分子 / 溶融塩 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請書の研究計画に基づいて、30年度に主として計画していた溶融塩を対象とした研究を行った。すなわち、点電荷モデルにおいて、陽イオンと陰イオン間の相違点を電荷の符号のみとして、イオン半径と質量などを全て同じ(両者の平均値)としたモデル物質を考案し、自己拡散係数、イオン伝導率、内部移動度、粘性率の各変数依存性をMD 計算によって評価した。さらに実在系溶融塩として、アルカリおよびアルカリ土類ハロゲン化物に対して、分極イオンモデルを用いた輸送係数の評価を行った。 その結果、まずモデル物質の輸送係数評価では、イオン質量の非対称性およびイオン半径の非対称性の影響について、定性的な理解を得ることができた。また、これらの非対称性効果を有する実在系として、溶融(Li-K)Brについて、Li:Kの全組成領域で、分極イオンモデルを用いて自己拡散係数と内部移動度を評価し、実験結果との良い一致を見ることができた。特にカリウムの低濃度領域で、相対的に軽くて小さいリチウムイオンと重くて大きなカリウムイオンの移動度が逆転するというChemla効果の再現を試みたところ、統計誤差の影響のため、明確な逆転現象は見られなかったものの、幅広い組成領域でカリウムイオンの移動度がリチウムイオンのそれより大きくなるというChemla効果に特有の現象を再現することができた。この成果については、2019年5月にフランスのオルレアンで開催される溶融塩の国際会議(MS11)にて口頭発表する予定である。一方、一連のアルカリ土類ハロゲン化物の分極イオンモデルを開発し、これらの超イオン伝導状態(固体)と溶融状態について、自己拡散係数およびイオン伝導率を評価し、実験値との良い一致を見ることができた。なお、溶融塩系での輸送係数の挙動は希ガス系に比べて複雑であるため、イオン液体を含めた定量的な定式化は今後の課題である。
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