2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K05647
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
井田 朋智 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (30345607)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 二電子伝播関数 / スピン汚染 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の超短パルス高強度レーザー技術の向上により、多価イオン状態の分子が実験室レベルで生成され、その興味ある分子物性が様々な研究対象となっている。例えばパルスレーザーを用いて気体2価イオン分子を生成し、分子内の特定の結合を切断する試みが行われている。これら興味ある分子を理論的に解析することは、パルスレーザー研究の発展には必要不可欠であるが、従来の計算方法では多価イオン状態を再現することは非常に困難である。そこで本研究では、多参照系を用いた二電子伝播関数を開発し、多価イオン状態分子の精密な物性解析手法の構築を目的とした。この目的のもとに、平成28年度は多電子伝播関数の有用性とスピン汚染の除去をいくつかの手法で検討した。 最初に申請者が提案した二電子伝播関数を用いてグリシン及びグリシン水和化合物のオージェスペクトル解析を行ったところ、水和の影響を良い精度で再現できた。これは申請者の提案する電子伝播関数が実際に興味ある対象へ適用可能であることを示唆しており、この結果は2016年にジャーナルに掲載された(投稿論文[1]参照)。更に電子伝播関数と同様な計算式を用いるMP2法において、多配置参照によりスピン汚染を完全に除去可能か検討した。いくつかの開殻系分子の反応活性化エネルギーを計算したところ、非常に簡便な近似により良い計算精度が得られることが分かった。この手法は電子伝播関数にも応用可能であり、当初の目的である多参照系を用いた二電子伝播関数の開発が大きく前進したことを示している。この結果は2017年度初頭にジャーナルに掲載された(投稿論文[2]参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した通り二電子伝播関数による物性解析は順調に進展しており、新規伝播関数の足掛かりとなる理論展開も進捗に淀みは無い。指導学生の協力により、投稿論文として発表も計画より早く行えたことから、おおむね順当に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、二電子伝播関数を効率的に計算可能とするプログラム開発と、電子伝播関数へスピン補正近似などの援用可能性について検討する。更に理論展開として、伝播関数に最適な多参照理論も検討する。既に計算環境は構築され、当初の目的通りに研究計画が進展していることから、今後の展開も期待できるであろう。
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Causes of Carryover |
現在、スピン成分補正近似を用いた論文を執筆中であり、その英文校正費用が次年度へ繰り越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
投稿論文の英文校正費用に使用する。
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Research Products
(4 results)