2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K05650
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
杉岡 秀行 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (20769822)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 表面・界面 / 界面動電現象 / 電気泳動 / コロイド界面科学 / 非線形界面動電現象 / マイクロ流体 / 流体MEMS |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度において、Physical Review誌1本を含む8本の関連論文を掲載することができ、本研究の目的である「非線形界面動電現象の基礎及びその設計基盤を確立すること」に関する研究群を前倒しに遂行できている。具体的には、大規模な直接シミュレーションができる環境を構築し(課題0)、 (1) 直接シミュレーション法による非線形界面動電現象の基本問題の解明を進め、印可電圧とイオン応答の位相ずれにより流速が減少する問題を解明することができた(課題1A)。これにより、非線形界面動電現象を利用したデバイスの性能を完全に設計予測できる道が開かれその意義は大きい。 (2)また、 非線形界面動電現象の基礎解明の前提となる“拡散イオン系の基本問題の解明”を進め、イオンの立体効果を考慮したイオン保存型ポアソン・ボルツマン理論を構築すること(課題2A)、及び、直接シミュレーション法により平行電極のエッジ部に流れが発生する現象を解明すること(課題2B)を達成できた。特に、2Aにより、全濃度領域をカバーできる設計手法を確立できる道が開かれた。また、2Bにより、開放系電極におけるイオンの取り込み問題を明らかにできた意義は大きい。 (3)さらに、大目的である「基礎と設計基盤の確立」の強化と発展のため、非線形界面動電現象を用いたマイクロ流体素子(ポンプ、キャチャー、セパレータ)の提案と理論検証を進めるとともに、非線形界面動電現象に由来する自己組織化問題やナノホール問題について基礎的な解明を進めることができた。 以上、今年度の成果は、本研究の進展が将来の革新的な小型血液診断システムや小型遺伝子診断システム等の実現に、ますます重要となることを明確に示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記載したように、当該年度において、一流紙であるPhysical Review誌1本を含む8本の関連論文(Physical Review誌1件、Journal of Physical Society of Japan誌6件、他1件)を掲載することができ、本研究の目的である「非線形界面動電現象の基礎及びその設計基盤を確立すること」に関する研究群を前倒しに遂行できている。 詳しくは、3年間で達成を目指している目標3項目6要素課題(1A~3B)について、以下の3要素課題(1A,2A,2B)について論文掲載まで完了しており、当初の平成28年度目標「2つの要素課題完了」に対して、150%の達成度の進捗状況である他、さらに大目的である「基礎と設計基盤の確立」の強化と発展のために5論文が論文掲載まで完了し、進捗は極めて良好な状態にあり、さらなる発展が期待される状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
残りの主要な3要素課題、すなわち、(1B)直接シミュレーション法により、イオン濃度が10mM以上となると非線形界面現象の流速が減少する問題を解明すること、(3A)電極反応を有する一次元系について、イオン拡散の応答特性を明らかにすること、(3B)電極反応を有する二次元系について、直接シミュレーション法により、非線形界面動電現象の応答特性を明らかにすること、を粛々と進める。 また、それとともに、この研究課題の領域を各段に発展させるための布石として、(発展課題1)熱が関与する非線形界面現象までを発展的・統一的に理解できるようにするために、直接シミュレーション法により、温度勾配下での非線形界面動電現象を解明すること、(発展課題2)非線形界面現象の設計基盤を強固にするために、理論予測されている非線形界面現象について、特に重要な現象や応用デバイス、たとえば、「非線形界面現象を用いた弾性梁アクチュエータ」や「非線形界面現象を用いた導電性粒子の配列現象」を実験によって検証すること、等に挑戦することにより、非線形界面現象の設計基盤をイノベーションへと繋げていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成29年度から、研究協力者を5人から8人に増強し、研究を前倒しに進めていく予定である。しかし、そのためには、設計・解析用のPC購入費用と実験検証用の器材購入費が不足することが、予見できたため、その費用を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究を前倒しに進めていくための、設計・解析用のPC購入費用または実験検証用の器材購入費にH29年度請求額と合わせて使用する予定である。
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