2016 Fiscal Year Research-status Report
分子内トンネル現象における逆同位体効果の解析に向けた半古典的経路積分法の開発
Project/Area Number |
16K05663
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
河津 励 国立研究開発法人理化学研究所, 戎崎計算宇宙物理研究室, 協力研究員 (00447913)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トンネル効果 / 経路積分法 / 半古典近似 / 量子化学 / 分子動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究で開発するアルゴリズムで用いる理論および個別のプログラム群の整備と実証を優先的に行った。最終的な結合プログラムの作成前にその元となる個別のプログラムの整備による後々の効率化を優先したため研究スケジュールを一部変更している。また、プログラム開発環境の構築はほぼ予定通りに行った。本研究では、半古典経路積分インスタントン法プログラム、分子動力学および経路積分分子動力学法プログラム、量子化学計算プログラムの三つを結合して用いる計画であり、現時点までに、量子化学計算プログラムSMASHのサブルーチン化インターフェイスの開発およびSMASH最新版への対応を終了しており、分子動力学および経路積分分子動力学法プログラムとの結合および応用計算を兼ねたテストを概ね終了した。また、この際に追加的に経験的DFT-Dプログラムとの結合も同時に行った。この計算では、複数の分子を狭い範囲に閉じ込めた時の原子核に対する量子効果の有無による挙動の違いを調べている。また、スパコン上で1024並列計算までのテストを行っており、この点では良好な性能を示している。現在このプログラムを用いた計算結果については解析作業中である。また、これ以前に行ったSMASHを用いていない計算結果については論文作成の最終段階に入っている。半古典経路積分インスタントン法プログラムについては初期のバージョンから、他のプログラムと組み合わせやすい形への改修の途中段階にある。また、半古典経路積分法と分子動力学法を結合した場合のアルゴリズムに関しては、いくつかの異なる近似精度での実装についての選定を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅延の主要な理由は、研究代表者の転職に伴い、一時期、研究時間が十分に確保できなかったことと、転職後の本プロジェクトに対する予定外のエフォート率の低下が挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に関しては、プログラム資源の整備を行った一方で、予定されていたアルゴリズム自体を実証するためのプログラムの完成にはまだ至っていない。この部分については当初の予定に比して半年程度の遅れがあるため、計画を後ろに半年ずらした形で推進する。これに伴い、後半で計算時間のかかる分子系への応用については圧縮し、アルゴリズムおよびプログラムの構築と実証を優先する。
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Causes of Carryover |
スケジュールの関係で理論化学討論会への参加を見送った。また、研究進捗の遅れに伴い、予定していたスパコン計算時間を購入しなかった。以上の理由で、一部の経費を次年度に持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の使用計画は概ね計画通りであり、主にスパコン計算資源の購入、学会参加費および旅費、論文出版費等に充てる。ただし、スパコン計算資源の購入額については、購入予定の九州大学計算機のリニューアルなどもあり、年度後半については変動する可能性がある。
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