2016 Fiscal Year Research-status Report
ジエン-鉄錯体からジアシル鉄錯体の合成とその反応開発
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16K05701
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡内 辰夫 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60274552)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジアシル鉄錯体 / ジエン鉄錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジエン鉄錯体からのジアシル鉄錯体合成の合成条件について検討を行う目的で,まず導入する配向基として,種々のエステル基やカルバモイル基を導入した,ジエン鉄錯体を合成し検討したところ,配向基としてN,N-ジイソプロピルカルバモイル基を導入したところ,比較的良好な収率でジアシル鉄錯体の合成が行えることを見出した。 反応の基質適用性についての検討を行うために,置換基を導入した6員環のジエン鉄錯体,7員環野路遠鉄錯体を合成し検討を行ったところ,ある程度反応には一般性があり,出発原料として,6員環のジエン鉄錯体のみならず,7員環のジエン鉄錯体を用いた場合にも反応が進行することを見出した。ただし,7員環のジエン鉄錯体を用いた場合には,生成物が不安定であったため,今後さらに配位子等に検討を行う必要がある。 また,用いる塩基を検討したところ,リチウムジイソプロピルアミドに代え,より嵩高いリチウム2,2,6,6-テトラメチルピペリジドを用いることで,一酸化炭素雰囲気下での反応が行えることが分かった。この条件で添加配位子の検討を行ったところ,リン配位子として,トリエチルホスファイトを用いた場合には,CO配位子を1つ持つジアシル鉄錯体が得られるのに対し,より嵩高いトリイソプロピルホスファイトを用いた場合には,CO配位子を2つもつジアシル鉄錯体が得られるという,新規の知見を見出した。このことは,配位子によって得られるジアシル鉄錯体を制御できることを意味する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジエン鉄錯体からのジアシル鉄錯体合成の合成条件について検討を行った結果,配向基としてN,N-ジイソプロピルカルバモイル基を導入したところ,比較的良好な収率でジアシル鉄錯体の合成が行えることを見出した。 また,当初の研究目的でもあった基質適用限界についての検討を行い,7員環の基質についても反応が進行することを見出した。 さらに,用いる配位子について検討したところ,トリエチルホスファイトを用いた場合には,CO配位子を1つ持つジアシル鉄錯体が得られたのに対し,より嵩高いトリイソプロピルホスファイトを用いた場合には,CO配位子を2つもつジアシル鉄錯体が得られるという,新規の知見を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,単離できたジアシル鉄錯体の構造を確認するために単結晶X線構造解析を行う。まずは結晶性の良いと考えられるCOを1つ持つジアシル鉄錯体について検討を行い,その後,平成28年度の検討により,初めて単離に成功したCOを2つ持つ錯体の検討を行う。その上で,COが2つ導入された錯体とCOが3つ導入された錯体の反応性の違いを明かとし,構造と反応性の相関関係について検討を行う。 これまでは,環状のジエン鉄錯体のみを出発原料として用いた検討を行ってきた。そこで,鎖状のジエン鉄錯体についても反応を試み,反応の基質適用限界についての検討を行う予定である。 また,平成28年度に引き続き反応の中間体を単離する目的で,添加する配位子等についての検討を続ける。
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Causes of Carryover |
当初予定よりも小スケールで反応を行うことができたことと,研究室在庫の試薬を用いることができたため,平成28年度に関しては,試薬費が大幅に削減することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は新規試薬の購入と,劣化した光反応装置を更新するのに当初予算通り予算消化を行う予定である。
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