2016 Fiscal Year Research-status Report
カリックスアレーンを基盤とするピコレベルでの生体機能物質識別蛍光センサーの開発
Project/Area Number |
16K05702
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
大和 武彦 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60136562)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヘキサホモオキサカリックス[3]アレーン / 蛍光生官能基の導入 / アルキルアンモニウムイオン / 包接機能 / アニオン認識 / アロステリック効果 / 蛍光性化学センサー / ピコレベル |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 合成ルートの開発 本研究ではupper rimのフェノール環に種々の官能基を導入したヘキサホモオキサカリックス[3]アレーンの簡便な合成ルートの開発がKey Stepとなる。そこで、本年度ではp-ヒドロキシ安息香酸エチルからの合成法を検討し、p-エトキシカルボニルホモオキサカリックス[3]アレーンが簡便な操作で2段階で合成可能なルートの開発に成功した。さらに、エトキシカルボニル基-COOEtを-COOH, -CH2OH, -CHO, NH2(CON3のクルチウス転位を用いて)等への変換を行った。 2. フェノール性水酸基への蛍光性官能基の導入 上述の成果を基にして、ヘキサホモオキサカリックス[3]アレーン類のフェノール性水酸基へのピレン、アントラセン等の蛍光性官能基の導入を行った。すなわち、本申請者がすでに確立しているフェノール性水酸基へのアミノエチル基の導入、ついでピレン-1-イソシアニドおよび9-アンスリルイソシアニドとの反応によって容易に行うことが明らかとなった。 3. アルキルアンモニウムイオンに対する包接機能に関する研究 合成した一連のアミン蛍光性センサーのアルキルアンモニウムイオンを用いてセンサーとしての評価を行う。さらに、lower rim上のウレア部分とアニオン(ハライドイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン等)との錯体形成に伴うアロステリック効果の発現についても核磁気共鳴分光法を用いる滴定実験および蛍光スペクトル法により検討した。アニオン認識部を導入したヘテロダイトピックヘキサホモトリオキサカリックス[3]アレーンを基盤とするピコレベル(10-12 M)まで検出可能なアルキルアンモニウムイオン蛍光性化学センサーの開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C3対称を持つホモオキサカリックス[3]アレーン誘導体を開発し、lower rimのフェノール性水酸基にアルキルアンモニウムイオンとの錯体形成可能な官能基および蛍光性官能基の導入に成功し、アロステリック機能を有するカリックス[3]アレーンを基盤とする蛍光性化学センサーの簡便な合成ルートの開発に成功した。さらに、本成果を元に、種々の生体機能分子との水素結合に基づく分子認識機能を蛍光スペクトル測定および核磁気共鳴スペクトル法を用いて評価するなど、着実に本研究の当初の目的を達成している。本研究成果は、アメリカ化学会、イギリス化学会、ワイリージャーナル等に公表し、国際的に高い評価を得ている。今後は、生物学的に重要なアミンレセプターを分子設計し、構造と分子識別能との相関関係を調べ、分子レベルでのドーパミン、セロトニン結合機構の解明にチャレンジする。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 生体分子に対する包接機能に関する研究 今年度開発した蛍光性ヘテロダイトピックヘキサホモオキサカリックス[3]アレーン類と種々の生体機能分子との水素結合に基づく分子認識機能を蛍光スペクトル測定および核磁気共鳴スペクトル法を用いて評価する。さらに、既存のドーパミン、セロトニン検出試薬との比較を行い、ヘキサホモオキサカリックス[3]アレーンへのアミン錯体形成配位子の導入による蛍光特性に及ぼす影響を溶液中・結晶状態(単結晶X線解析装置)の両方から調べる。さらに、光学活性ホスト化合物へと変換し、不斉認識を行う。 2. 臨床応用への検証 さらに、ドーパミンのような生物学的に重要なアミンに対する有効な認識システムの臨床応用について検証する。本研究テーマに関しては共同研究者である岡山大学大学院医歯薬学総合研究所の勝 孝 教授との研究打合せを行い、高感度(10-9~10-12 Mで検出可能な)簡便なアミンセンサーの実用化を試みる。 3. ドーパミン、セロトニン結合機構を解明 有機合成化学的な手法を用いて、本研究で開発した生物学的に重要なアミンセンサーをスルホン酸基(-SO3H)やトリアルキルアンモニウム基(-NR3+)を導入した水溶性センサーへと変換し、構造と分子識別能との相関関係を調べ、分子レベルでのドーパミンおよびセロトニン結合機構を解明する。
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Causes of Carryover |
本研究を遂行するにあたり、目的生成物の蛍光変化によるアルキルアンモニウムイオン認識能を系統的に評価するために、現有の分光蛍光光度計の他にもう一台購入予定で予算申請した。しかし、新規物質を合成するに必要な試薬、実験器具等の消耗品の購入及び合成新規物質の構造決定に不可欠な質量分析の大学連携研究設備ネットワーク(九州大学先導物質化学研究所)への測定依頼料金が予想以上に大幅に増大せざるを得なかった。それゆえに、備品である分光蛍光光度計の購入を取りやめ、予算を消耗品購入及び依頼分析の支払いに回した。今年度の予算の残額は次年度の大学連携研究設備ネットワークへの測定依頼料金に充てる予定にしている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の予算の残額は次年度の消耗品購入及び大学連携研究設備ネットワークへの測定依頼料金に充てる予定にしている。本使用計画に基づいて、次年度の研究が効率良く遂行でき、当初の研究目標に到達できると確信している。
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[Journal Article] A study of anion binding behaviour of 1,3-alternate thiacalix[4]arene-based receptors bearing urea moiety2016
Author(s)
S. Rahman, H. Tomiyasu, H. Kawazoe, J.-L. Zhao, H. Cong, X.-L. Ni, X. Zeng, M. R. J. Elsegood, T. G. Warwick, S. J. Teat, C. Redshaw, P. E. Georghiou and T. Yamato
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Journal Title
New J. Chem
Volume: 40
Pages: 9245-9251
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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