2016 Fiscal Year Research-status Report
炭素-炭素結合形成を鍵反応とするグラフェン型分子の合成法開拓と分子素子開発
Project/Area Number |
16K05709
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
長洞 記嘉 福岡大学, 理学部, 助教 (30402928)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸素複素環 / グラフェン / 核磁気共鳴分光法 / 紫外可視吸収分光法 / 単結晶X線構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノ技術の進展とともに特異な伝導性や高い熱安定性を有するフラーレンやカーボンナノチューブ、グラフェンが21世紀の鍵物質となることが期待されている。これらの大量合成と精製法確立が急務である。本研究では精密有機合成により単一物質としてのグラフェン型分子の合成法の確立とそれらの性質解明を目的としている。 平成28年度は、優れた合成前駆体となる酸素原子を含む複素環化合物の合成を検討した。研究代表者らが開発した含酸素複素環を得る方法(Eur. J. Org. Chem. 2014, 1423-1430.)を基に、グラフェン型含酸素複素環分子を新規に合成することに成功した。さらに、これらの化合物にホスホネート類を作用させ脱酸素-芳香族化反応により、新規グラフェン型炭化水素類を得ることにも成功した。しかしながら、反応効率が悪く中程度の収率に留まっており、効率的合成の観点では更なる検討の余地を残している。 合成した新規グラフェン型炭化水素類の各種分光学解析も行った。核磁気共鳴法では特徴的な低磁場領域に環周辺部の水素原子の吸収が観測され、芳香族類に見られる環電流効果を示した。紫外可視吸収分光法では分子長の短い関連物質よりも長波長側で吸収帯が観測された。これは電子遷移が共役系拡大によるバンドギャップ低下の影響を強く受けていると考えられる。単結晶X線構造解析では固体状態の分子構造を明らかにすることに成功し、溶液中のみならず固体状態でも芳香族性を有していることを証明した。今後の分子設計・性質評価に重要な指針を与えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
優れた合成前駆体となる酸素原子を含む複素環化合物の合成を検討した。研究代表者らが開発した含酸素複素環を得る方法を基に、グラフェン型含酸素複素環分子を新規に合成することに成功した。これら酸素複素環類とホスホネート類の反応を検討し、中程度の収率で反応が進行する条件を見出した。反応試薬や条件を精査し、効率合成可能な条件を見出すことが急務である。 合成した新規グラフェン型炭化水素類の各種分光学解析も行った。核磁気共鳴法では特徴的な低磁場領域に環周辺部の水素原子の吸収が観測され、芳香族類に見られる環電流効果を示した。紫外可視吸収分光法では分子長の短い関連物質よりも長波長側で吸収帯が観測された。これは電子遷移が共役系拡大によるバンドギャップ低下の影響を強く受けていると考えられる。単結晶X線構造解析では固体状態の分子構造を明らかにすることに成功し、溶液中のみならず固体状態でも芳香族性を有していることを証明した。今後の分子設計・性質評価に重要な指針を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に合成した酸素原子を含む複素環類の合成法を参考にし、環内の酸素原子を硫黄やセレン、テルル原子の変更する。これら合成した分子の元素に由来する構造や物性を評価し、相関を解明する。合成した典型元素を環内に含むグラフェン型分子の溶液および結晶構造を核磁気共鳴や赤外吸収およびラマン分光法、X 線結晶構造解析で明らかにする。さらに、紫外可視吸収および発光、電気化学測定により、それらの電子構造を解明する。分子軌道計算も併せて行い、得られた物性値を考察し、グラフェン骨格内に導入した元素に由来する物性の違いを明らかにする。分子構造や基礎的性質を解明した後、その内容を国際的な学術誌に発表する。 グラフェン型分子を用いた電界効果型トランジスタおよび有機EL デバイス作製を探索するため、合成した典型元素を含むグラフェン型分子の薄膜特性を評価する。真空蒸着もしくはスピンコート法で薄膜を作製し、その特性を明らかにする。有機EL デバイス作製では、これまでに解明した性質に基づき、電子輸送もしくはホール輸送層として成膜し、発光特性を評価する。得られたデータを解析し、分子設計を逐次変更することで、優れた電子およびホール輸送特性を示す分子の迅速な探索を行う。
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