2017 Fiscal Year Research-status Report
炭素-炭素結合形成を鍵反応とするグラフェン型分子の合成法開拓と分子素子開発
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16K05709
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
長洞 記嘉 福岡大学, 理学部, 助教 (30402928)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | グラフェン / 環変換 / 典型元素 / 電子遷移 / 固体構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノ技術の進展とともに特異な伝導性や高い熱安定性を有するフラーレンやカーボンナノチューブ、グラフェンが21世紀の鍵物質となることが期待されている。これらの大量合成と精製法確立が急務な課題である。本課題では精密有機合成によりグラフェン型分子を合成し、それらの性質解明を目的としている。 平成29年度はこれまでに合成した酸素原子を含む複素環を反応原料に用いて、窒素・リン・硫黄・セレン・テルル原子を骨格内に導入することを試みた。典型元素導入剤としてNH3・P(SiMe3)3・Na2E (E = S, Se, Te)を用いて検討を行ったところ、環変換反応が進行し、標的とするグラフェン型分子の合成に成功した。これらの分子構造は各種分光学的手法により評価し、幾つかは単結晶構造解析にも成功し、固体構造を解明した。しかしながら反応効率が悪い反応もあり、収率向上が今後の課題である。 合成した化合物はいずれも高い熱安定性を有しており、不活性ガス中では勿論のこと、大気下でも分解は認められなかった。核磁気共鳴分光法では環周辺部の水素原子の吸収が低磁場領域に観測され、対応する炭化水素と比較し、十分な芳香族性を有していることが明らかとなった。さらに、典型元素導入に伴い紫外可視吸収スペクトルでは低エネルギー領域にも吸収帯が出現し、電子遷移がバンドギャップ低下の影響を強く受けていることを明らかにし、今後の分子設計に重要な指針を与える結果と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸素原子を含む複素環を反応原料に用いて、窒素・リン・硫黄・セレン・テルル原子を骨格内に導入することを試みた。典型元素導入剤としてNH3・P(SiMe3)3・Na2E (E = S, Se, Te)を用いて検討を行ったところ、環変換反応が進行し、標的とするグラフェン型分子の合成に成功した。 それらの溶液構造を各種分光学的手法で、固体構造をX線結晶構造解析により明らかにした。特に紫外可視吸収スペクトルでは典型元素導入によりバンドギャップの顕著な低下に由来する低エネルギー吸収が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
グラフェン型分子を用いた電界効果型トランジスタおよび有機ELデバイス作製を探索するため、独自の手法で合成した典型元素を含むグラフェン型分子の薄膜特性を評価する。真空蒸着もしくはスピンコート法で薄膜を作製し、その特性を明らかにする。有機ELデバイス作製では、これまでに解明した性質に基づき、電子輸送もしくはホール輸送層として成膜し、発光特性を評価する。得られたデータ解析し、分子設計を逐次変更することで、優れた電子(もしくはホール)輸送特性を示す分子の迅速な探索を行う。
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