2016 Fiscal Year Research-status Report
構造制御に基づくハロゲン架橋一次元錯体の電荷双安定性と機能の創出
Project/Area Number |
16K05713
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高石 慎也 東北大学, 理学研究科, 准教授 (10396418)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 擬一次元ハロゲン架橋金属錯体 / 平均原子価 / 混合原子価 |
Outline of Annual Research Achievements |
擬一次元ハロゲン架橋金属錯体における新電子相を創出する目的で、新規錯体の開発を行った。主な成果としては、以下の点があげられる。2,3-diaminobutane-1,4-diol(dabdOH)配位子を用いて臭素架橋パラジウム錯体において350Kまで安定に平均原子価状態をとる新規錯体[Pd(dabdOH)2Br]Br2の合成に成功した。本錯体では、ヒドロキシ基と対アニオン (Br-) との間にもう一つ水素結合が追加され、対アニオンをMX鎖から離す効果があることが確かめられた。これにより、Pd-Pd間距離は5.1818(4) Aとこれまでに知られているPdBr錯体では最も短くなり、室温でも平均原子価状態であった。種々の測定から、[Pd(dabdOH)2Br]Br2では、分解が始まる443 Kという高温までAV相が安定化されていることが明らかとなった。この値は、これまでに報告されているM = Pd のMX錯体の最高記録を133 Kも上回る値であり、水素結合を導入するというアプローチの有効性を示している。さらに、12個の結晶の電気伝導率を測定したところ、室温で38 S cm-1 にも達し、既存のPdBr錯体の記録の1万倍という極めて高い値を示した。 また、塩素架橋金属錯体[Pd(dabdOH)2Cl]Cl2の合成にも成功した。本錯体は塩素架橋パラジウム錯体で初の平均原子価状態を取る錯体である。また、ハロゲン化物イオンを混合した錯体[Pd(dabdOH)2Cl1-xBrx]Cl2-yBryの合成にも成功し、ハロゲンの混合比率によってPd-Pd間距離を連続的に制御することができることが分かった。また、これらの一連の金属錯体ではいかなるハロゲン比率においても平均原子価状態が実現されていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において、これまでに例のなかったCl架橋パラジウム錯体において平均原子価状態を実現するなど、これまで不可能だと思われていた電子状態を実現することができた。また、混合ハロゲンによるPd-Pd間距離の連続制御にも成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定としては、これまでに例のない異種金属による混合金属錯体の開発を行っていく予定である。これは、電子状態のことなる金属イオンをドーピングすることでフェルミエネルギーのチューニングを目指した研究である。これにより、本錯体系の熱電特性を制御することが可能になると考えられる。特に第二遷移金属イオン(RuやRhなど)を用いた混合金属錯体([Ni1-xRux(chxn)2Br)Br2やNi1-xRh(chxn)2Br]Br2など)を合成し、Seebeck係数や電気伝導率の測定をおこなっていく予定である。 また、Ni錯体において、これまではNi-Ni距離を縮める方向にのみ研究が行われていたが、逆にNi-Ni距離を延ばすことでどのような電子状態が実現されるかを明らかにしていく予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Optically Visible Phase Separation between Mott-Hubbard and Charge-Density-Wave Domains in a Pd-Br Chain Complex2016
Author(s)
Takefumi Yoshida, Shinya Takaishi, Hiroaki Iguchi, Hiroshi Okamoto, Hisaaki Tanaka, Shin-ichi Kuroda, Yuka Hosomi, Shoji Yoshida, Hidemi Shigekawa, Tatsuhiro Kojima, Hiroyoshi Ohtsu, Masaki Kawano, Brian K. Breedlove, Laurent Guèrin, Masahiro Yamashita
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Journal Title
Chemistry Select
Volume: 2
Pages: 259-263
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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