2016 Fiscal Year Research-status Report
レドックス型イオン結晶による水中からの高選択性・高容量イオン吸着
Project/Area Number |
16K05742
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 さやか 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10361510)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イオン結晶 / 複合材料・物性 / 酸化還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
可逆的な酸化還元が容易におこるモリブデン系のポリオキソメタレートを導入した一次元ミクロ細孔(細孔径0.32 nm)を有する多孔性イオン結晶を合成した。結晶に還元剤としてアスコルビン酸水溶液を加えると、構造を保持したままK+が細孔に取り込まれ、続いて酸化剤として塩素水を加えると、カリウムイオンが細孔から吐き出される。結晶の還元は還元剤を加えるだけでは進行せず、アルカリ金属イオンの共存により進行する。また、還元剤は結晶中に取り込まれず、水溶液中にとどまる。以上の結果より、イオンと電子は一次元細孔内を協奏的に拡散すると考えられる。結晶中のポリオキソメタレート還元及びイオン吸着過程の速度論的検討を行ったところ、両者の速度定数は同程度であり、さらに、イオンをカリウムからセシウムに変えると速度定数は増加する。水和イオンが一次元ミクロ細孔内に取り込まれるには脱水和される必要があることから、速度定数の増加は、脱水和のギブスエネルギー(あるいは水和半径)がセシウムイオン<カリウムイオンでありセシウムイオンの方が細孔内に取り込まれやすいため、と説明される。この結果を活かし、多孔性イオン結晶によるセシウムイオンの選択的吸着を試みた。孤立細孔を有する多孔性イオン結晶を用いると、組成式あたり3.8個のセシウムイオンを、イオン交換と還元的吸着を介して選択的に取り込むことがわかった。セシウムイオンの吸着量は134mg/gであり、一部の金属硫化物には満たないが、実用化されているプルシアンブルー(133mg/g)よりも大きい。高濃度の共存イオン下でもセシウムイオン吸着選択性は低下しない。なお、上記の一次元細孔を有するイオン結晶とは異なり、酸化によりセシウムイオンを排出しないため、セシウムイオンの分離・保管(海水中の放射性セシウム除去を念頭)に適している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二つの目標(セシウムイオンあるいはリチウムイオンの選択的吸着)のうち、前者が実現できているので。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにセシウムイオン(Cs+)の選択的吸着は達成されたので、リチウムイオン(Li+)の選択的吸着に着手する。セシウムイオンの吸着選択系列は水和イオン半径の序列(Cs+ < Rb+ < K+ < Na+ < Li+)で決まるが、これを逆転させるためにはイオン半径の序列(Li+ < Na+ < K+ < Rb+ < Cs+)に従う材料の設計指針が重要である。イオン半径の小さなLi+を選択的に吸着するために密な構造をとる結晶を基盤とする。以下の(1)~(3)を検討する: (1)密な結晶構造へのLi+の還元的導入 (2)サイト欠損(微小空隙)の導入(参考:申請書の業績7, 17)による吸着速度の制御 (3)酸化によるLi+の回収:Li+の還元導入後,酸化によりLi+が放出される(回収される)か
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Causes of Carryover |
旅費が想定よりも少なかったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学生の学会参加費として用いる
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