2017 Fiscal Year Research-status Report
集積構造依存型発光を示すπ電子系分子のライブラリ構築と発光機構解析
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16K05743
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
務台 俊樹 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (80313112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重光 保博 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (50432969)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 固体発光 / ESIPT蛍光 / 有機結晶 / 結晶多形 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子集積構造に依存して固体発光特性が変化する「集積構造依存型発光」は、分子の化学構造を変えずに発光が制御できる系として注目されるが、分子集積構造と固体発光特性との関連性の理解はいまだ道半ばといえる。本研究は集積構造依存型発光を示す『同一の』発光ユニットを有する化合物ライブラリを作成し、各種測定と高精度の計算化学による励起状態計算を通じてこれを明らかにすることを目的とする。さらに、熱や圧力、溶媒などの外部刺激での分子集積構造変換を制御因子とする、新しい有機固体光機能材料への展開を目指す。
本年度は、引き続き2'-ヒドロキシフェニルイミダゾ[1,2-a]ピリジン(HPIP)誘導体の集積構造依存型発光について合成化学および計算化学の双方から検討を進めるとともに、ねじれコンホメーションを有するHPIP類似体を設計・合成し、固体発光特性を評価した。以下、具体的に述べる。 1. 昨年度合成した種々のHPIP誘導体のうち、特に置換位置の異なる一連のモノクロロ体が集積構造依存型発光を示すことを見出し、本研究課題を推進するにあたり重要な化合物群であることを確認した。 2. 前項のクロロHPIP群について、計算化学による励起状態の予備的な評価をおこない、分子集積構造と固体発光特性の関連性解析に向けて基礎データを収集するとともに、詳細な計算プロセスを構築する有用な情報を得た。 3. 多様なコンホメーションを取ることが可能な分子では結晶多形が容易に得られるという発想に基づき、分子内ねじれ構造を導入したHPIP誘導体を合成した。その結果、8-位にフェノール構造を有するイミダゾ[1,2-a]ピリジンから二種類の結晶が得られ、結晶中でねじれ角が異なっていた。またこれらは集積構造依存型発光を示すことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究課題を大きく推進させると考えられる一連のモノクロロHPIP群が示した集積構造依存型発光を見出し、計算化学による励起状態の評価も一定の進捗を見た。さらに、分子内ねじれ構造を有する集積構造依存型発光を示す化合物群を合成するなど、新たな成果も得た。一部、合成の困難さ等の事由で、補助金の一部を次年度に繰り越すこととしたが、研究全体としては概ね順調に進展していると判断できる。 以上より自己評価として【 (2) おおむね順調に進展している。】とした
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度および本年度得られた結果をもとに、HPIP誘導体を中心としてこれまでに合成した化合物群の集積構造依存型発光の特性評価について、結晶の作成と構造解析、および発光測定からさらに詳細に検討する。また、本研究課題の最も重要なテーマである結晶構造と発光特性の関連性解析について、高精度の量子化学計算による評価をモノクロロHPIP群から開始し、研究課題のまとめに向けた結論を得る。
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度、化合物合成プロセスの一部において想定を大きく超えた時間を費やすこととなり、試薬購入に計上していた額に未使用分が生じた。また測定用消耗品について、本年度中に納入されなかった物品があり、形式上、未使用分が生じた。 (使用計画) 試薬については、合成プロセスの見直しにより次年度中に当初計画通り合成試薬を購入する予定である。測定用消耗品は、次年度4月中に納入される予定である。
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Research Products
(8 results)