2016 Fiscal Year Research-status Report
ドナー・アクセプター縮環型の高分極性π共役系分子の創製と有機トランジスタへの展開
Project/Area Number |
16K05744
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 顕 東京大学, 物性研究所, 助教 (20589585)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 有機半導体 / ドナー・アクセプター / 有機トランジスタ / テトラチアフルバレン誘導体 / 化学修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、一つ目の研究課題である「ドナー・アクセプター縮環型の高分極性π共役系分子の創製」に関する研究を行った。具体的には、申請者らが最近開発に成功したo-ベンゾキノン縮環型テトラチアフルバレン誘導体に化学修飾を施した新規類縁体の合成研究に主に取り組んだ。その結果、メチルチオ基を有する類縁体を得ることに成功し、その構造・物性を明らかにすることができた。 先行研究で合成した化合物に比べ、この化合物は、短段階・高収率・大スケールで合成が可能であり、また、有機溶媒に対する溶解性も高い、という長所を持っていることが分かった。各種測定、量子化学計算から、先行研究の化合物と同様に、溶液状態における良好な両性レドックス性、小さなHOMO-LUMOギャップ、固体状態における近赤外光吸収を示すことが明らかとなった。さらに、単結晶構造解析の結果、分子はヘリングボーン型に積層し、二次元的な層状構造を形成していることが分かった。分子間の移動積分を見積もったところ、スタック方向において、HOMO-HOMOだけでなくLUMO-LUMOにおいても比較的大きな値(相互作用)を有していることが明らかとなり、アンバイポーラ材料として有望であることが示唆された。予備的な実験として、合成した単結晶を用いたボトムゲートトップコンタクト型の電界効果トランジスタを作成し、特性評価を行ってみたが、残念ながら駆動せず、今後、デバイスの作成方法を検討する必要があると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンバイポーラ有機トランジスタ候補分子である表題化合物の短段階・高収率・大スケールでの合成法の開発に成功し、第一の懸案事項であった分子合成に関する課題を克服できたことから、本研究は順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度合成に成功した候補分子を用いて、真空蒸着法による有機トランジスタ作成、特性評価を行う。また、他のアルキルチオ基を有する類縁分子の合成も行い、構造物性に対するアルキル鎖長の効果を系統的に調査・考察する。
|
Research Products
(5 results)