2016 Fiscal Year Research-status Report
農作物の発光標識剤を目指した毒劇物フリーかつ発光波長可変な希土類ナノ粒子の開発
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16K05750
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
西山 桂 島根大学, 教育学部, 教授 (40283725)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発光ナノ粒子 / 発光バイオマーカー / 希土類酸化物 / 発光標識材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
農作物の15%が、栽培中の病害で失われている。そこで、光照射により罹病部だけ発光する ような生体標識を行えば、罹病部を早期に切除し、病気が作物全体に拡大するのを防止できる。しかし既存の標識剤(量子ドット)は毒劇物(Cd 等)を含むので、法定の残留基準に抵触する。申請者は最近、世界に先駈けて、発光希土類(Ln)をドープしたナノ粒子「Ln@Y2O3」を合成した。Ln@Y2O3 は毒劇物フリーであり、かつ可視域の広い範囲で発光波長可変である。既にLn@Y2O3 の粒径: d = 35 nm を得ており、今回は d ≦ 10 nm を目標とする。この粒子は、罹病細胞の孔紋膜(開口径 100 nm)から細胞内に取り込まれ、作物の発光標識剤として応用できる。 本研究では、界面活性剤鋳型法を用いた発光希土類ナノ粒子の合成手法の再検討を行い、発光バイオマーカーとして十分に利用可能な、粒径 dav ≦ 10 nmのナノ粒子の合成を最終目的とした。そのために、本研究では、従来手法の「粒径の分散が大きい」「合成期間が長い」という課題を解決するために、合成素過程の再検討を行った。合成素過程の再検討では、まず、マイクロ波装置加熱装置や、エバポレーターを用いて実験過程の代替を行おうとしたが、Eu3+に由来する発光希土類ナノ粒子の合成には至らなかった。そこで、従来手法の実験の基盤はそのままに、①均一沈殿法による鋳型形成時間、②得られたミセル溶液の乾燥方法、③焼結用るつぼ、④電気炉による焼結プログラムをそれぞれ変更し、それぞれの実験段階でdav の小さいナノ粒子を合成するために最適な実験手法を探索した。その結果、①~④の実験段階において、dav = 200~250 nm のナノ粒子を合成することができた。 また、これらの最適化された実験手法を組み合わせ、新規合成手法(現手法)を考案した。現手法で合成を行ったところ、従来手法に比べ、合成手法を著しく改善した結果、合成時間を96%短縮することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ln@Y2O3の化学合成方法の開発とともに、発光量子収量の測定手法開発に代表されるような発光物性評価手法を開拓している。この手法は、従来は測定が難しかった粉末状ナノ粒子(固体)の発光評価に関して大きく寄与するものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降は、発光量子収量 Φ ≧ 40%の実現及び、発光色のマルチカラー化を併せて展開する。準備研究では、d = 35-500 nm のEu@Y2O3に対して Φ = 27% が得られている。発光マーカーとして使うためには、Φ ≧ 40% が必要とされている。Φ の向上は、Y2O3 母材中へのEuのドープ比の改良により達成できる。 ドープする希土類を、Ln = Eu, Tb, Er, Dy, 及びそれらを共ドープすることで、可視光の広い領域(500-700 nm)にわたる発光色を用意する。 さらに、合成したナノ粒子を植物(イネ科作物)に投与する。準備研究では、根の組織において、UV 励起によりEu の発光が観察された。本研究でd ≦ 10 nm の粒子が実現できれば、粒径が小さく、末端組織まで運搬されるので、茎や葉へも標識されるはずである。
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Causes of Carryover |
輸入品である化学原料(希土類原料)が安価に調達できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度以降に使用する。
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Research Products
(4 results)