2018 Fiscal Year Research-status Report
農作物の発光標識剤を目指した毒劇物フリーかつ発光波長可変な希土類ナノ粒子の開発
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16K05750
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
西山 桂 名城大学, 理工学部, 教授 (40283725)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発光希土類ナノ粒子 / 界面活性剤 / 界面活性剤鋳型法 / 4f-5d遷移 / 単子葉類 / 双子葉類 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年4月1日付にて、報告者は所属大学機関を異動した。すなわち平成29年度は島根大学(松江市)から名城大学(名古屋市)への異動に伴って実験設備を移設するとともに、再稼働させることに膨大な時間を要した。このため、研究計画の一部変更を余儀なくされたものの、次のような成果を得たので報告する。今回、Eu2+をドープすることで当該イオンに起因する青色発光ナノ粒子(粒径 約100 nm)を得ることができた。このナノ粒子は、母材となる酸化イットリウム中から当該イオンへと励起エネルギー移動が発生し、結果として当該イオンの青色発光(極大波長 約440 nm)を得た。農作物の15%が、栽培中の病害で失われている。そこで、光照射により罹病部だけ発光するような生体標識を行えば、罹病部を早期に切除し、病気が作物全体に拡大するのを防止できる。しかし既存の標識剤(量子ドット)は毒劇物(Cd 等)を含むので、法定の残留基準に抵触する。申請者は最近、世界に先駈けて、発光希土類(Ln)をドープしたナノ粒子「Ln@Y2O3」を合成した。Ln@Y2O3 は毒劇物フリーであり、かつ可視域の広い範囲で発光波長可変である。既にLn@Y2O3 の粒径: d = 35 nm を得ており、今回は d ≦ 10 nm を目標とする。この粒子は、罹病細胞の孔紋膜(開口径 100 nm)から細胞内に取り込まれ、作物の発光標識剤として応用できる。本研究の次の目的は、フルカラー発光希土類ナノ粒子を開発することである。平成30年度は研究を進展させ、ナノ粒子を農作物(単子葉類、双子葉類)に投与して吸収を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
将来的に作物を育成する際,肥料や水に混ぜるだけで作物が吸収し,紫外線を照射することで病気の部分のみ発光するナノ粒子を合成する。また病斑部分を切除することで,作物全体を処分することなく育成を継続することを可能にし,人間が可食できる安全なナノ粒子を作ることをめざす。病気の部分のみに吸収させるためにはナノ粒子を抗体で修飾する必要があるが、これは別の研究にて実施する。本研究では作物の葉,茎,根隅々まで到達するナノ粒子を合成すること、作物の種類によるナノ粒子の吸収の違いを研究することを目的としている。本研究では単子葉類、双子葉類の違いや、種ごとの違いを明らかにするため世界で主要穀物として用いられているイネ科、ウリ科に投与し、吸収率を測定した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、発光ナノ粒子のフルカラー化を進展させる。従来のLn@Y2O3においては、Ln = Eu(橙色)、Tb(緑色)が実現していたが、青色発光は未到達であった。フルカラー発光が実現すると、異なる病斑に異なる発光色でマークすることが可能となる。また、単子葉類と双子葉類への吸収効率とメカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
H29年4月に名城大学へ異動したため、執行計画に変更が生じたため。
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Research Products
(3 results)