2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K05760
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
永田 央 名城大学, 理工学部, 教授 (40231485)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 炭素系材料 / 二酸化炭素 / 電解還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に二酸化炭素還元触媒の開発に注力し、一連の金属錯体の合成と、カーボンペーパーとの複合化、電気化学挙動について調べた。 まず、疎水性ポルフィリンを用いた検討を行った。テトラメシチルポルフィリン金属錯体のカーボンペーパー上での電気化学は、先行研究があるものの、あまり再現性がよくなかった。また、複合化した電極の電気化学応答が、水溶液中で速やかに失われることが多く見られた。電解前後の SEM 等の比較により、電極上に固着したポルフィリン微粒子が電気化学測定後に脱落していることが観測された。 次に、疎水性側鎖を持つコバルト錯体を用いた検討を行った。二酸化炭素還元能が報告されているピリジンジイミド型配位子に疎水性側鎖を結合してカーボンペーパーとの複合化を試みたが、問題点が二点発生した。一つは、錯体が極性溶媒中で不安定化したことである。これは配位子が疎水性相互作用で沈殿する傾向を持つため、錯体形成の平衡が分解側にずれるためと考えられる。もう一つは、疎水性基の導入によって錯体の二酸化炭素還元能が失われたことである。検討の結果、ピリジンの4位にアルコキシ基を導入すると錯体の電子状態が大幅に変わり、還元挙動が変化することがわかった。この問題点は、ピリジンとアルコキシ基の間にフェニル基を一つ挿入することで解決できた。 最後に、シッフ塩基型金属錯体を用いた検討を行った。有望な金属としてニッケル・銅を選び、疎水性基を持つサロフェン錯体を複数合成して電気化学挙動を検討した。中でも、銅錯体について、二酸化炭素の還元電流が観測された。定電位電解を行ったところ、カーボン表面に金属銅の析出が確認された。還元生成物は大部分が水素・一酸化炭素であるが、ごく少量エチレンの発生も見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、いくつかの金属錯体で二酸化炭素の還元挙動を観測することができた。特に、シッフ塩基型錯体を用いて得られた結果のうち、金属銅の析出と二酸化炭素還元の同時観測は、予期せぬ結果であり興味深い。新しい研究の展開を予感させる成果と言える。 ポルフィリン錯体を用いた研究は、合成と溶液系での電気化学についてはほぼ予定通り進行したが、炭素材料との複合化について、もう少し詳細な条件検討を要する段階である。 ピリジンジイミド型錯体については、炭素材料との複合化に適した分子デザインが意外に困難であることがわかった。また、コバルト錯体では一酸化炭素しか生成しない点も問題であり、他の金属に展開する必要性も明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、まずシッフ塩基型錯体の炭素電極との複合化について詳細に検討する。特に、錯体が還元的に分解されて金属銅になる現象は、おそらく二酸化炭素の還元挙動と密接に関連していることと、電極と錯体との複合化によって金属銅の形状をコントロールできる可能性を示しているため、これらの点について検討を進める。 ポルフィリン錯体については、側鎖置換基の調節によって、炭素材料との親和性を高める検討を行う。また、置換基の立体制御を用いて、炭素材料上の集合体の性質をコントロールする検討も進める。ルイス酸性の亜鉛・マグネシウム錯体と、低原子価状態をとりうる鉄・コバルト・ニッケル・銅錯体を共存させ、協同的相互作用が発現するかどうかを検証する。 ピリジンジイミド型コバルト錯体については、配位子の再検討を進める。必ずしも平面型三座配位子にはこだわらず、facial 型の三座配位子を用いた錯体についても検討する。
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Causes of Carryover |
最終年度ではないため、端数として残金が出た。次年度に合わせて消耗品費として執行する。
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Research Products
(2 results)