2016 Fiscal Year Research-status Report
新型活性種を鍵とした有機分子触媒による触媒的空気酸化反応の開発
Project/Area Number |
16K05764
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
是永 敏伸 岩手大学, 理工学部, 准教授 (70335579)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 有機分子触媒 / ラジカル活性種 / 酸化剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本応募研究では、研究代表者が極最近開発したシクロペンタジエニルラジカル種を触媒として用い、有機化合物の触媒的空気酸化反応を開発することを目的としている。 28年度はまず、以前の研究で参加的カップリングを行うと触媒活性種が系中に生成することがわかっていたので、その反応液から触媒活性種を単離する検討を行った。しかし触媒活性種はラジカル種であり、カラムクロマト等の精製操作を行うと速やかに分解してしまったため、反応液からの単離は難しいことがわかった。そこで次に、触媒活性種の別途合成を行った。触媒前駆体である含フッ素シクロペンテン誘導体にマグネシウムを加えることで、活性種であるシクロペンタジエニルラジカル種の合成に成功した。その際に、再現性が悪いという問題に直面した。詳細な調査の結果、用いた触媒前駆体である含フッ素シクロペンテン誘導体には未知の副生物が10%程度生成したためであることを突き止めた。この副生物は19F NMRで検出しづらく、HPLC分析により存在が判明した。この副生物は、含フッ素シクロペンテン誘導体の合成時には見られなかったが、保管中に空気中の湿気により分解して生成したことが明らかとなった。生成した副生物は再結晶により除去できることがわかり、またアルゴン雰囲気下で保管すれば発生しないことも分かった。この精製した含フッ素シクロペンテン誘導体を用いることで、再現性良く、また、きれいにシクロペンタジエニルラジカル種を発生させることができることがわかった。なお、この生成した含フッ素シクロペンテン誘導体は、試薬会社により販売が開始された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
28年度の目標は、触媒活性種であるシクロペンタジエニルラジカル種の単離精製であった。当初予定した手法は、触媒的酸化的ホモカップリング反応を行った後に存在している触媒活性種を単離するというものであったが、触媒活性種は極めて不安定であり、多くの化合物が存在している中から触媒活性種のみを取り出すことは不可能であった。そこで、やはり予定としていた、含フッ素シクロペンテン誘導体を種々の無機系の還元剤によりアニオン種に変換し、それを空気中の酸素で処理することにより触媒活性種を合成する手法を試み、それに成功した。しかし有機溶媒中に触媒活性種の存在を確認できたものの、そこから取り出して、X線等の単離精製を行うことには成功することができなかった。とはいえ、予期しなかった触媒前駆体の安定性とその解決方法を確立し、それが本試薬の試薬企業からの販売化につながったという、予定になかった成果を考えると、おおむね順調に進展したと評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
①触媒活性種の活性や安定性の更なる向上をめざし、構造改変を行う。現在の所、触媒活性種にはヘプタフルオロトリル基を組み込んでいるが、この置換基を他の置換基に変更すると酸化剤の能力が大きく変化することが期待できる。そこで、現状よりもさらに強い電子求引性置換基を導入し、新たな触媒活性種を開発する。 ②すでに開発した、あるいは、①で開発予定の触媒活性種を用い、有機化合物の空気酸化反応を試験する。本研究の触媒活性種はグリニャール試薬(炭素-Mg結合)を一電子酸化しホモカップリングを効率的に起こさせる能力を有するが、その他の有機分子に対する酸化能力は全くの未知数である。しかし広範囲な有機化合物を酸化できるTEMPOが、本研究の触媒活性種と同じく、グリニャール試薬のホモカップリングのための酸化剤として用いられていることから、シクロペンタジエニルラジカル触媒活性種が炭素-メタル結合に対する一電子酸化剤としてしか働くことができるかどうかの調査を行う。
|
Causes of Carryover |
28年度は触媒の単離精製ののちにX線分析等を予定していたが、予期しない副生物の発生によりその解決に時間がかかり、そのために予定していた経費(X線分析のための旅費を含む)を使用しなかったため、予定したほど経費を使用しなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度は、多くの触媒候補化合物を合成する予定であり、多額の試薬購入を予定している。また、触媒活性種の単離精製のための大量合成や、各種分析のために他大学を訪問する予定もあるため、28年度の残額と合わせ、予算を執行していく予定である。
|
Research Products
(1 results)