2016 Fiscal Year Research-status Report
ホスファアルキンを基質とする新規アザホスホール合成法の開発とその機能評価
Project/Area Number |
16K05767
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 一成 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (10709471)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ホスファアルキン / 環化付加反応 / ヘテロ環 / 銅触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
含リンヘテロ環化合物は、電子材料や、錯体合成における配位子として興味深い化合物である。そのため、含リンヘテロ環化合物の新規合成法の開発は重要な課題といえる。しかしながら、含リンヘテロ環化合物の合成手法は限られている。 炭素-リン三重結合をもつ化合物であるホスファアルキンは、含リンヘテロ環化合物を合成するための有用な基質である。これまで、ホスファアルキンの反応性は種々研究されてきたが、遷移金属触媒反応系での変換反応はほとんど知られていなかった。最近、我々は鉄触媒を用いて、ホスファアルキンとジインとの[2+2+2]環化付加反応により、ホスファベンゼンを合成する反応手法の開発に成功している。これはホスファベンゼンを触媒的に合成した世界初の例である。 そこで、今回我々は、ホスファアルキンを基質とした環化付加反応を更に展開することで、様々な含リンヘテロ環化合物の合成を着想した。そこで、[2+2+2]環化付加反応を[3+2]環化付加反応へと展開することで、5員環化合物である1,3-アザホスホールが合成できるのではないかと考えた。すなわち、遷移金属触媒を用いて、ホスファアルキンと種々の含窒素化合物との環化付加反応を行うことで目的の1,3-アザホスホールを合成する新規手法が開発できるのではないかと考えた。 今回、我々はホスファアルキンとイソシアノ酢酸エステルとの反応について、種々の金属触媒を用いて検討した。その結果、銅触媒を用いたときに、目的の1,3-アザホスホールが得られることを見出した。この反応について、詳細な条件検討を行うとともに、ホスファアルキンを用いる他の[3+2]環化付加反応の検討も行う。また、得られた1,3-アザホスホールをさらに修飾することで、遷移金属錯体合成における新しい配位子としての応用も検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請段階では、予備的知見として銀触媒を用いたときにわずかながら反応が進行することが分かっていた。しかし、更なる検討の過程で、銅触媒がより有効であることを見出した。そこで、銅触媒を用いて更なる検討を行うことで、反応収率の大幅な向上に成功した。加えて、本反応では環化付加段階でのホスファアルキンの挿入方向によって2つの異性体が生じることがわかっていたが、この異性体についても銅触媒を用いることで選択的な合成が可能となった。 本研究では、当初の想定よりも優秀な銅触媒を見出したことで、大幅に加速された。また、選択性を含め、より高度に制御された優秀な反応系を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、銅触媒を用いたホスファアルキンとイソシアノ酢酸エステルとの反応について、反応条件の検討を行っている。そこで、今後は銅触媒の配位子について詳細な検討を行うことで、収率の向上、触媒量の低減、異性体の選択性の向上を目指して検討を行う。 その後、最適条件において基質一般性の検討を行い、反応の適用範囲の拡大に務める。また、各種スペクトル測定や、量論反応によって、反応機構を明らかにする。明らかになった反応機構を基に、更なる環化反応をデザインする足掛かりとする。 本手法で合成されるアザホスホールは他の手法では合成困難な骨格であるから、更なる誘導化を行い、遷移金属錯体の配位子としての応用を検討していく予定である。
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