2017 Fiscal Year Research-status Report
二核カルボキシラートパラジウム触媒による位置選択的な炭素水素結合変換反応
Project/Area Number |
16K05770
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
塚田 直史 静岡大学, 理学部, 准教授 (70292240)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | パラジウム / 二核錯体 / フラン / ピロール / アリール化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究実施計画に従い、二核カルボキシラートパラジウム錯体を触媒に用いたフランおよびピロールのβ位選択的アリール化反応の詳細いついて検討した。 1.平成28年度の予備検討において、二核アセトキシパラジウム錯体を触媒に用いた2-ペンチルフランのフェニル化反応がβ位選択的に進行することを見出しているが、平成29年度では、様々な置換フランへの適用性について検討を行った。その結果、様々な電子供与性置換基を有するフランに適用可能であることがわかった。収率は中程度ではあるが、いずれの反応でも、βフェニル化合物を優先的に得ることができた。これに対し、電子求引性置換基を有するフランの反応はα選択性で進行することがわかった。また、様々なヨウ化アリールについても検討した。ニトロ基等の強い電子求引性基を有するヨウ化アリールでは位置選択性が大きく低下したが、ほとんどのヨウ化アリールの反応でβアリール化を達成できた。 2.フランの反応と並行してピロールおよびその他の芳香環のアリール化反応についても検討を行った。ピロールの反応でもアリール化体は得られたが、αアリール化生成物が優先的に得られた。窒素上の置換基を変えることにより位置選択性の逆転を試みたが、嵩高い置換基を導入すると反応が進行しなくなってしまうことがわかった。 上記の検討に加えて、予備調査としてヘテロ芳香環のアルケニル化反応およびアルキニル化反応について検討した。まず、チオフェンのアルキニル化を行なった。その結果、ブロモシリルアセチレンを用いることによりチオフェンにシリルアセチレニル基を直截導入することに成功した。反応は位置選択的に進行し、α置換体が高い位置選択性で得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二核カルボキシラートパラジウム錯体を触媒に用いたフランのアリール化については、計画通りに研究が進行した。生成物の収率は中程度であり、また置換基にいくらかの制限があったが、これまでに前例のほとんどないβ位の直截アリール化を見出すことができた。ピロールのアリール化反応に関する検討は計画通りには進行しなかった。また、アルキニル化反応の予備調査では、選択性が期待したものとは逆であったが、高い選択性で反応が進行することを見出している。計画通り進行しなかったものもあるが、計画以上に進行しているものもあり、総合的に見れば概ね順調に進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度で得られた知見を基に次の研究を計画している。 1.予備実験により、ブロモシリルアセチレンを用いることによりチオフェンのアルキニル化が高位置選択的に可能であることを見出した。ヘテロ芳香環の直截アルキニル化反応の報告は極めて限られており、優先すべき課題である。収率が中程度であるためさらなる検討が必要である。また、この反応を、フランやピロール等のチオフェン以外のヘテロ芳香環のアルキニル化にも応用する。 2.アリール化反応あるいはアルキニル化反応に関する知見を基に、アルケニル化反応について検討する。
|
Causes of Carryover |
理由:試薬および溶剤の効率的な利用により、残額があった。 使用計画:研究の進展次第では必要な試薬および溶剤の量が増加するので、これを充てる。
|