2017 Fiscal Year Research-status Report
マグネシウムアミドの特性を生かしたハロゲンダンスおよびシクロアルキン発生法の開発
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16K05774
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡野 健太郎 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (30451529)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シクロアルキン / シクロアレン / マグネシウムアミド / ハロゲンダンス / ヘテロ芳香族化合物 / チオフェン / ワンポット反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、前年度に確立したマグネシウムビスアミドを用いて発生させたシクロアルキンの環化付加反応を検討し、一般性に関する情報を得た。塩基として、その他の反応剤を検討し、アルミナート型塩基もまた、シクロアルキンを発生させることを明らかにした。また、基質一般性を調べる過程で、置換基の立体的な影響によりシクロアレンが発生することもわかった。そこで、同一の基質からシクロアレンが優先して発生する反応系を確立するため、アミド塩基の構造展開を行っている。また、発生させたシクロアルキンの合成的応用に先立ち、別法でシクロアルキンとシクロアレンを発生させる方法を確立し、すでに今年度に論文発表している。 バッチ系のハロゲンダンスにおいて、マグネシウムビスアミドMg(TMP)2・2LiClが室温下、円滑にハロゲンダンスを進行させることも確認した。従来用いられていた、LiTMPなどのリチウムアミドとは異なり、反応条件を適切に選択することで、ハロゲンダンスを停止させることも可能であった。これにより、置換様式の異なる多置換チオフェン類の合成が可能になった。また、非対称なブロモチオフェンやブロモフランのハロゲンダンスに、置換基がおよぼす影響を検討した。その結果、エステルやアミドが配向基として作用し、従来とは異なる1,3型の転位様式でハロゲンダンスが進行することを確認した。さらに、オキサゾリンを配向基として利用することで、これまでに報告例がないブロモピロールにおいてもハロゲンダンスが円滑に進行することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、研究代表者が予想していた結果とは異なり、今年度得られた結果は、アミド塩基の構造展開により、同一の環状エノールトリフラートから、シクロアルキンとシクロアレンの発生を制御可能であることを示唆している。そこで、現在、金属種やアミドの構造展開を行っている。また、発生させたシクロアルキンの合成的応用に先立ち、別法でシクロアルキンとシクロアレンを発生させる方法をすでに確立し、論文発表している。現在、シクロアレンを経由する新規触媒反応も見出しており、合成的な応用を検討している。 ハロゲンダンスについては、配向基を用いる手法をさらに発展させ、これまでに報告例がないブロモピロールのハロゲンダンスを確立した。現在、アラインの発生が懸念されるベンゼンやピリジンなどを母核にもつ芳香族ハロゲン化物へ展開している。さらに、マイクロフローを用いて、ハロゲンダンスの進行を制御する条件も確立しつつあり、一般性を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、短段階で発生させたシクロアルキンとシクロアレンを用いて、有用化合物を合成するための反応開発を行う。特に、偶然見出したシクロアレン発生法は、従来多段階が必要であった前駆体合成を極めて単工程化するものであり、さまざまな環化付加反応をはじめとして、環状構造に対する官能基導入法としての可能性を探る。 ハロゲンダンスについては、官能基導入の足がかりとなるハロゲン原子(ブロモ基)が転位しながら、求電子剤と反応する合成的有用性を示すため、ラメラリン類の合成を達成する。すでに、ブロモピロールのハロゲンダンス・根岸カップリングが進行することを確認しており、多様なラメラリン誘導体を網羅的に合成可能な経路を開発する。また、2-ブロモチアゾールなど、従来のバッチ系ではアニオン中間体が分解し、円滑にハロゲンダンスが進行しないヘテロ芳香族化合物について、マイクロフローの特徴を生かして反応条件を検討する。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)H29年度はほぼ当初通りの計画で物品購入を行っており、現時点での次年度使用額は、H28年度において生じたものである。 (使用計画)マイクロフロー反応の検討において、必要な消耗品があるため、重点的に購入する。
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Research Products
(20 results)