2018 Fiscal Year Research-status Report
アズレンの触媒的自在官能基化を鍵とする新奇π共役系分子材料の開発
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16K05778
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村井 征史 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (40647070)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アズレン / 脱酸素芳香族化 / アライン / 多環芳香族炭化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年、[n]フェナセン骨格のナフタレン環をアズレン環に組み換えたアズレノ[2,1-a]フェナントレンの合成と、そのトランジスタ素子としての性能を評価した。これはアズレンの5員環側にフェナントレンが縮環した化合物であり、有機分子としては中程度のホール移動度を示すことを確認できた。本年度は、さらに優れた性能を有するアズレン誘導体を探索するため、本研究者が過去に報告したレニウム触媒によるエポキシドの脱酸素反応を応用し、その異性体の網羅的な合成法の確立を目指した。具体的には、フランとベンザインとのDiels-Alder反応により、容易に合成できる7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタジエン誘導体の脱酸素芳香族化を利用することにした。まず、モデル基質を用いた反応条件の精査により、触媒として過レニウム酸アンモニウム、酸素捕捉剤としてトリフェニルホスファイトをそれぞれ用いることで、想定した反応が中性条件下、円滑に進行することを見出した。この発見は、その後、多環芳香族炭化水素の逐次的な芳香環増環反応へと展開し、最近、論文として報告することができた。並行し、5,6-ジハロアズレンを塩基と反応させることで生じるアズレン骨格のアラインを、イソベンゾフラン誘導体とDiels-Alder反応させた後、連続的に脱酸素芳香族化することで、アズレンの7員環側へπ系が拡張された化合物群の合成を試みた。その結果、触媒として酸化レニウム(VII)を用いることで、低収率ではあるが、目的としていたアズレノフェナントレンの新しい誘導体が得られることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アズレン骨格を有する多環芳香族炭化水素の新しい合成法を見出し、アズレンの7員環側へπ系が拡張されたアズレノフェナントレンを得ることができた。現状では収率が低く、反応効率の観点で問題が残されているが、この発見は、新しい類縁体群の創製へとつながる重要な知見である。一方、ここで見出した脱酸素芳香族化反応を、位置選択的な臭素化、ベンザインの発生、フランとのDiels-Alder反応と組み合わせることで、多環芳香族炭化水素に縮環するベンゼン環の数を、逐次的に増やす手法を開発することもできた。このように、アズレン以外の芳香族化合物群にも適用できる、一般的なπ共役系拡張反応を確立できたことから、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに見出したアズレノフェナントレン合成法の反応条件を精査し、収率の改善を目指す。縮環数の増加や母核への置換基の導入により、様々な誘導体を合成する。
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Causes of Carryover |
必要だと考えていたガラス器具や有機、無機反応剤の一部を、本研究者が所属する研究室のもので代用でき、当初計画で算出していた直接経費を節約できたため。 昨年に得られた、アズレンのπ共役系拡張反応をさらに改良するため、有機および無機反応剤の購入費用として、研究費の差額を充てる予定である。
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Research Products
(13 results)