脂肪族ポリカルボナート部位を有するブロック共重合体の合成と機能

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 16K05788
• Research Institution: Tokyo University of Agriculture and Technology
• Principal Investigator: 中野 幸司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70345099)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: ブロック共重合体 / エポキシド / 二酸化炭素 / ポリオレフィン / ラジカル重合 / 高分子合成

Outline of Annual Research Achievements

本研究では，エポキシドと二酸化炭素（CO2）との交互共重合で得られる脂肪族ポリカルボナート（APC）を一つのブロックとするブロック共重合体に関して研究を実施する．特に，APCをマクロ開始剤とするオレフィン重合が可能であるかを明らかにするとともに，得られるブロック共重合体の相分離挙動や相溶化作用を解明し，APCの用途開発に資する知見を得ることを目的とする．
1) APC部位を有するマクロ開始剤の合成：APCを土台として種々のブロック共重合体を精密に合成するために，APCをマクロ開始剤とした原子移動ラジカル重合（ATRP）を計画した．そこで，ATRPの代表的な開始基であるハロエステル基を末端に導入したAPCマクロ開始剤を設計した．種々のハロエステル基の導入に成功したが，中でも2-ブロモ-2-メチルプロピオン酸エステル基を導入した場合に，最も効率的に合成できることが分かった．また，エポキシド/CO2交互共重合において，対応するハロカルボン酸を連鎖移動剤に用いたイモータル重合を進行させることで，効率的にAPCマクロ開始剤を合成できることを明らかにした．
２）マクロ開始剤を用いたブロック共重合体の合成：調製したマクロ開始剤を用いて，オレフィンのATRPをおこなった．触媒として，一般的な銅－アミン錯体を採用した．用いる触媒や反応温度などの条件を精査することで，スチレンやメタクリル酸メチルのATRPがリビング的に進行し，目的のブロック共重合体を合成できることを明らかにした．

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の計画通り，初年度に，設計したAPCマクロ開始剤の合成とそれを用いたブロック共重合体の合成に成功している．この過程において，各種重合条件や用いる基質が，APCマクロ開始剤やブロック共重合体の合成効率に与える影響もある程度把握することができた．これらの知見を次年度以降に活用することで，種々の新しいブロック共重合体の合成が可能になると期待される．

Strategy for Future Research Activity

１）初年度で合成に成功したAPCマクロ開始剤を用いて，種々のビニルモノマーの重合を検討する．また，初年度に合成したAPCマクロ開始剤では，エポキシドとしてプロピレンオキシドのみを用いていたが，他のエポキシドを用いたAPCマクロ開始剤の合成が可能かも検討する．
２）初年度では，APCマクロ開始剤を用いた重合として，ATRPのみを検討した．一方，リビングラジカル重合の手法としては，ニトロキシドを介した重合（NMP）や付加開裂型移動（RAFT）を利用した重合も知られている．特に，RAFT重合は，最も基質適用範囲が広い．そこで，これらの手法に適した開始剤の合成とそれらを用いたリビングラジカル重合が可能かを検討する．

Causes of Carryover

重合条件の検討で高価な試薬の利用も考慮していたが，安価な薬品を用いた条件でも目的物を合成できることが分かったため

Expenditure Plan for Carryover Budget

２９年度に請求した助成金と合わせて，主に物品費（有機合成用試薬），旅費（成果発表）にあてる．