2016 Fiscal Year Research-status Report
置換基を有する非対称グリコリドの位置および立体選択的開環重合触媒の開発
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16K05793
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野村 信嘉 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (70291408)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 理貴 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (20376940)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メチルグリコリド / 位置選択的 / salen / アルミニウム / 開環重合 / 生分解性 / 精密重合 / 立体選択的 |
Outline of Annual Research Achievements |
まずラセミ体メチルグリコリド(rac-MG)を合成し、1.2当量のベンジルアルコール存在下でrac-MGを反応した。触媒には5 mol %のホモサレン型触媒を用い、フェノールのオルト位の置換(R)基効果を調べた。その結果、Rが嵩高くなると2級アルコールの生成比率が高くなることが分かったが、R = tBu、tBuMe2Si、そしてさらに嵩高いiPr3Siと変化させても、選択性がほとんど変わらなかった。 次に光学活性モノマーとなるL-メチルグリコリド(L-MG)を文献に従って合成を試みたが、低収率でしか合成出来なかった。反応機構から考察し、別途、クロロ酢酸無水物を購入して反応に用いることで解決出来た。続いてsalen型Al触媒を用いてL-MGを重合した。光学活性モノマーを使用することで、重合反応による立体選択性の問題を除去し、位置選択性の評価を容易にした。salen型触媒のバックボーン(N~N)には、炭素数3を用いた。これはC3のホモサレン型触媒はラクチドの立体選択的重合反応で高い重合活性と立体選択性を示し、分子量分布の制御を成し得たためである。置換基がPh基の場合は触媒による位置選択性が75%と低かったが、置換基をtBu基にすると立体的嵩高さにより位置選択性は86%に向上した。そこでさらに嵩高いMe3Si基、tBuMe2Si基、さらに嵩高いiPr3Si基を検討したものの、rac-MGの場合と同様に位置選択性はほとんど変化しなかった。 そこでバックボーン(N~N)の炭素差をC2からC4程度まで変化させたり、置換基を導入したが、位置選択性は改善しなかった。バックボーンに1,1'-ビナフチル骨格(ラセミ)を導入したが大きな変化は見られなかったが、1,1'-ビナフチル骨格を光学活性にしたところ、これまで用いていた1H NMR測定では評価出来ないほど飛躍的に選択性が向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定していたラセミ体メチルグリコリドと光学活性L-メチルグリコリドを合成した。光学活性体は、論文で報告されている手順に修正を加える必要があった。 重合研究を開始前に、メチルグリコリドにある二つのエステル結合のどちらが切断されやすいか調べたところ、グリコール酸のカルボキシル基のエステル結合が選択的に切断され、2級のアルコキシドがポリマー末端になることを確認できた。これによりポリマー鎖末端の不斉炭素により次に反応するモノマーの立体化学を選別出来る可能性があり、研究の目的達成に適合した戦略であることを証明できた。 光学活性モノマーを用いて重合を検討し、触媒の立体的な嵩高さである程度の位置選択性を達成できた。しかし、80-90%の選択性であり、十分な選択性には達しなかった。そこでバックボーンを種々検討し、光学活性な2,2'-ビナフチル基を導入することで、極めて高い位置選択性を達成する事が出来た。 以上より研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
光学活性L-メチルグリコリド(L-MG)の位置選択的重合反応が達成できたため、ポリ(L-メチルグリコリド)とポリ(D-メチルグリコリド)とをそれぞれ合成し、DSC測定により熱的性質を調べる。また、それぞれのポリマーを1:1で混ぜて溶液とし、沈殿操作による析出をさせて熱的性質を調べる。ポリ乳酸の場合のようにステレオコンプレックスを形成すれば、熱的性質に違いが見られるはずである。 続いて、rac-MGとラセミ触媒との組み合わせによる重合反応を検討し、位置選択性に加えて立体選択的な重合反応の確立に向けて検討する。位置選択的重合で優れた結果を与えた1,1'-ビナフチルをバックボーンとし、サレン型配位子の置換基を変化させることにより、位置選択的かつ立体選択的重合反応触媒の開発を目指す。 次に、マンデル酸とグリコール酸とからなるフェニルグリコリド(PG)の重合を検討し、位置および立体選択的重合反応系を一般性を検証する。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通り使用したものの、実験の優先順位を変えたことにより、一部の薬品の購入が来年度になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
配位子の原料となる光学活性(R)-1,1'-ビナフチル-2,2'-ジアミンは購入して使用したが、そのエナンチオマーである(S)-体の検討が持ち越されたため実購入となっている。次年度は(S)-体を購入し、研究を進める。
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Research Products
(6 results)