2016 Fiscal Year Research-status Report
キラル溶媒から精密らせん高分子への高効率不斉転写に基づく不斉触媒反応系の開発
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16K05796
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長田 裕也 京都大学, 工学研究科, 助教 (60512762)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | らせん高分子 / ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル) / キラル溶媒 / 不斉触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までに数多くの不斉触媒反応が開発され、光学活性医薬品や機能性材料等の合成に広く応用されているが、その合成には非常に手間が掛かり、不斉触媒反応開発のボトルネックとなっている。アキラル触媒を用いてキラル溶媒中で反応を行い、生成物のエナンチオ選択性を制御することができれば、極めて簡便なプロセスで不斉触媒反応を行うことができると期待されているが、そのような例は極めて限られていた。一方で、高分子主鎖へのキラル溶媒によるらせん不斉誘起に関する研究も報告されつつあるものの、完全に一方向巻きの不斉らせん誘起は未だ達成されていない。本研究では、らせん高分子のキラル溶媒中での完全一方向巻きらせん誘起に基づいた不斉触媒系の構築について検討を行った。従来の方法では、主鎖の自由度が高すぎるため、完全な不斉環境構築には至っていない。本研究では、ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)を基本骨格として用い、側鎖の構造を適切に設計することで、通常不斉源として用いることの難しい、入手容易なキラル溶媒を用いて不斉反応を完全に制御できる触媒システムの開発を目指した。様々なアキラル側鎖を有するポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)を合成し、キラル溶媒中での円偏光二色性スペクトルを測定することで、不斉らせん誘起能力の定量評価を行った。これらのスクリーニングの結果、最も効率よく不斉らせん構造を誘起可能なキラル溶媒とアキラル側鎖構造の決定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、(1)キラル溶媒の徹底的なスクリーニングによって効果的に不斉らせん構造を誘起できる溶媒の探索を行い、また(2)アキラルポリキノキサリンの側鎖の最適化を行なうことで、キラル溶媒中での不斉らせん誘起能力の向上を目指した。 キラル溶媒による不斉らせん誘起の初期検討として、種々のキラル溶媒に単純な構造のアキラルポリキノキサリンを溶解させ、円偏光二色性スペクトルを測定することで、不斉転写効率とキラル溶媒の構造について明らかにした。本検討における単純なアキラルポリキノキサリンとして、これまでに十分な知見の蓄積のあるプロポキシメチル基を側鎖に有するポリキノキサリンを用いて検討を進め、キラル溶媒としては種々の入手容易な光学活性化合物群について優先的に検討を進めた。スクリーニングの結果、不斉誘起において光学活性リモネンが極めて効果的であることを見出した。 さらに効果的に不斉らせん構造を誘起するため、ポリキノキサリンのアキラル側鎖の最適化について検討を行った。種々のアキラル側鎖を導入したポリキノキサリンを合成し、キラル溶媒中での円偏光二色性スペクトルを測定したところ、当初の検討に用いたプロポキシメチル側鎖を導入したポリキノキサリンが最も効率よく不斉らせん構造を誘起できることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討によって、最も効率よく主鎖不斉らせん構造を誘起できるキラル溶媒とアキラル側鎖を決定することが出来た。今後、触媒作用を有する側鎖を導入することで、不斉反応への展開を行なう。
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Causes of Carryover |
本年度の研究では、キラル溶媒とアキラル側鎖構造の最適化について、当初の計画よりもより詳細な検討を進めたため、遷移金属を用いた触媒への応用は行わなかった。そこで予算の一部について、次年度における遷移金属錯体の購入のために使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
不斉触媒反応への展開のために、種々の遷移金属錯体を購入する。特に、これまでに不斉反応への展開に成功している、パラジウム錯体またはニッケル錯体を主軸として検討を行う。
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Research Products
(26 results)