2018 Fiscal Year Research-status Report
天然由来のリボフラビン誘導体を用いる機能性材料の開発
Project/Area Number |
16K05797
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
飯田 拡基 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (30464150)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | リボフラビン / 有機分子触媒 / ヨウ素 / 酸素酸化 / 光反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
リボフラビンから合成したカチオン性フラビンとヨウ素をそれぞれ触媒量用いた2成分触媒系により、チオールによるイミダゾピリジンやピラゾロンのスルフェニル化反応が進行し、対応するスルフェニル化生成物が効率良く生成することを明らかにした。従来の酸素酸化的スルフェニル化反応とは異なり、本反応系ではフラビン-ヨウ素触媒によりメタルフリーかつ温和な条件下において、理想的酸化剤とされる分子状酸素のみによって駆動する低環境負荷型の反応である。また、このフラビン-ヨウ素触媒系はC-S結合のみならずC-N結合形成反応にも適用できることが分かった。 さらに、リボフラビン誘導体が可視光照射下において有機光触媒として働き、チオールを対応するジスルフィドへと効率良く変換できることを見出した。本反応はフラビン触媒を用いたチオールの光酸化の初めての例であり、分子状酸素と光のみにより進行するグリーンな反応系が構築されている。また、アニオン性高分子である硫酸化キチンを担体として用い、カチオン性フラビンやアルカリ金属類をイオン間相互作用により会合・固定化させた超分子会合体が、ケトンのBaeyer-Villiger反応の良好な不均一系触媒として機能することを明らかにした。フラビン触媒とアルカリ金属触媒、さらにはキチンの触媒効果が協奏的に働くことにより、これまでフラビン触媒では達成困難であった6員環の環状ケトンのBaeyer-Villiger反応に初めて成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまで合成した多様なリボフラビン誘導体の機能や特性について詳細に検討を行った。その結果、合成したリボフラビン誘導体やリボフラビン含有超分子が、分子状酸素や光を用いた低環境負荷型の分子変換反応を進行させるとともに、特異な触媒活性を示すことを明らかとした。なかでも、フラビン-ヨウ素触媒を用いたC-N結合形成反応やフラビン触媒による光酸化反応に関する新しい知見は、今後より高度な研究成果に繋がることが期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、フラビン-ヨウ素触媒を用いたC-N結合形成反応やフラビン触媒による光酸化反応に焦点をあて、その汎用性や反応メカニズムなどについて詳細に検討を行う。
|
Causes of Carryover |
理由:当初計画では種々の合成反応の検討のため、極低温反応装置などの購入を予定していた。しかしながら研究の結果、予定していた反応が常温でも進行することが明らかとなった。さらに、合成した分子群が良好な触媒能を発現し、様々な触媒反応に利用できることを見出したため、予定していた備品の購入よりも反応試薬などの購入に充てる方が本研究目標の達成には適切であると考えた。
使用計画:触媒反応開発に注力するために、有機合成用試薬やガラス器具、理化学機器類などの消耗品が必要になる。次年度使用額をそれらの購入経費に充てる。
|