2016 Fiscal Year Research-status Report
人工骨材料を目指した有機無機ハイブリッド材料の機能化
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16K05798
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
竹岡 裕子 上智大学, 理工学部, 准教授 (50338430)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機無機ハイブリッド / 生体材料 / 生分解性高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体骨の主成分である水酸アパタイト(HAp)は優れた生体適合性と骨伝導性を有するため、人工骨材料として多く用いられているが、硬く脆い性質を有する。柔軟性を有する生分解性高分子とHApの複合化により優れた機械的特性を有する人工骨材料の開発が期待される。これまでにHApと生分解性高分子の複合化を行ってきたが、従来の複合体では、強度の増加に伴い弾性率も増加し、HApと高分子鎖間の接着性が低く、リン酸緩衝溶液(PBS)や擬似体液中において早期にHApと高分子鎖の解離が起こり、機械的強度の低下が生じることが問題であった。 本研究では、HApとポリ(L-乳酸) (PLLA)の両者との相互作用が可能なイソシアネート基を複数有する化合物を架橋剤として複合体に導入し、HApとPLLA間の接着性に優れる複合体を作製し、上述の課題解決を試みた。イソシアネート基は水酸基と反応して高強度かつ柔軟性を有するウレタン結合を形成する。架橋剤としてイソシアネート基を複数有するポリメリックメチレンジフェニルイソシアネート (PMDI)を導入し複合体の作製を行った。 複合体作製のため、Diol型LLA oligomer (Diol OLLA)の合成を行った。PMDIのTHF溶液をp-HAp内に浸漬させ、合成したDiol OLLAを気孔中で塊状重合することによりPMDI-PLLA/HAp複合体を作製した。作製したPMDI-PLLA/HAp複合体のTG測定の結果より、複合体中への高分子の導入率は約13-21%であった。PMDI-PLLA/HApの曲げ強度と弾性率はそれぞれ最大で50 MPa、7 GPaであった。PMDIの導入により、p-HApと比較し同程度の弾性率を保ちながら、高い曲げ強度を持つ複合体の作製が可能であった。 また、ウレタンの導入後も優れた生体適合性を示すことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水酸アパタイトからなる多孔性セラミックス中への生分解性高分子の導入は順調に進んでいる。無機物であるHApと有機物である生分解性高分子間の界面接着性については、ウレタンの利用により、改善されることが示唆されたため、当初の目的を果たしつつある。一方で、二相性セラミックスの合成に関しては、実験室のオイルフリー化に伴い、水酸アパタイトの加熱合成法をオイルバスからアルミブロックに変更したため、合成条件の再検討が必要となった。2016年度待つの段階で再検討が終わり、方法が確立されたため、今後は順調な進展が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
二相性セラミックスBCPの合成を系統的に行い、孔サイズと組成(HAp/TCP)が制御されたBCPセラミックスを得る。種々のモノマー単位を構成要素とする生分解性ブロック共重合体のBCPへの導入と人工骨材料としての評価を行う。特に、人工骨として応用する際に重要である強度、生体適合性に着目する。多孔性セラミックに導入された生分解性高分子の分解に伴い、骨芽細胞が分化し、新生骨が形成されることが望ましいため、生分解挙動と、分化挙動をあわせて検討する。 有機-無機界面の相互作用を強め、生理条件下において、生分解性高分子が早期に溶出する現象を抑えるため、有機無機間の相互作用を高める方法を検討する。本研究では、貝の接着タンパク質として知られ、カルシウム等の金属への親和性が高いカテコール基を生分解性高分子の末端に導入、もしくはブロック共重合化させた高分子を用い、界面強度(接着強度)を高めることを試みる。また、無触媒重合で得られる高分子の分子量は比較的低く、これも溶出の早さの原因となりうるため、in-situ重合の際に重合末端OH基と反応する架橋剤を導入し、複合体の強度向上と、初期強度の保持を検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度に必要とされる品目の購入の執行の過程で生じた残金の額が小さく、次年度予算と合わせて必要な消耗品を購入した方が効果的に予算を使用できると考えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予算の消耗品費として、使用を計画している。
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Research Products
(3 results)