2016 Fiscal Year Research-status Report
機能性官能基を導入した環状分子からなる中空ナノ粒子の創成
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16K05801
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
富永 昌英 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (60361507)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 環状化合物 / 自己集合 / 結晶構造 / 動的挙動 / 中空球状ナノ粒子 / 相転移 / 官能基導入 / 溶媒効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
多種多様な機能性官能基を導入した環状分子ライブラリーから、自己集合性中空ナノ粒子群を作製し、新しい構造・物性・機能を併せもつ機能性中空ナノ粒子の創出を目的としている。昨年度は、新規環状分子の合成と官能基導入による環状分子群の作製と、これらを基盤とする分子集合体の構築について、以下の研究を実施した。 (1)ナフタレンジイミドとアダマンタンからなる環状分子を合成した。極性溶媒中で、球状集合体が生成し、時間経過とともにネットワーク集合体へと形態変化し、最終的には結晶へと相転移した。X線構造解析により、三日月状の環状構造であった。また、ペリレン存在下では、サイズの大きな球状集合体が生成し、同様の形態変化・結晶生成を示した。結晶構造解析により二分子の環状分子が一分子のペリレンを電荷移動相互作用によりはさみこんだ会合体を形成していた。すなわち、二成分による球状集合体形成、形態変化、共結晶生成を示した。 (2)八つのヒドロキシ基を有する六角形型環状分子への置換基導入を検討した。置換基の種類によって、球状集合体の膜構造が異なることが分かった。中でも、プロパギル基をもつ環状分子は、溶媒に対応したナノ粒子のサイズや安定性を示した。構造解析から、環骨格は同じであるがプロパギル基のコンフォメーションは異なっていた。 (3)四つのヒドロキシ基を有する環状分子の合成と球状ナノ粒子の作製に成功しており、新たに溶媒に依存した分子集合挙動を見いだした。極性溶媒中では中空球状ナノ粒子を経由した結晶が得られ、ひし形の環状構造であった。非極性溶媒中では球状集合体を経由しないで結晶が得られ、正方形の環状構造であった。また、環骨格上にアルキル基やビニル基などの置換基の導入を実施した。その結果、多様な置換基を有する環状分子群の構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1)新規環状分子の合成と、(2)置換基導入による環状分子群の作製について検討を行った。(1)に関して、特異な電子特性を有するナフタレンジイミド骨格からなる環状分子の合成と自己集合体の構築に成功した。低収率ながら数ステップで容易に合成できることから汎用性は高いと考えられ、同様の合成手法でピロメリット酸ジイミドやペリレンジイミド骨格からなる環状分子の合成へと展開できる。また、この環状分子とペリレンからなる球状微粒子の作製も実現しており、ピレンやポルフィリンなどのπ系分子の適用も可能である。二成分によるゲルや超分子ポリマーの開発について数多く報告されているが、球状集合体の構築については例が限られている。また、これまでに二分子のフェノール誘導体をもつ二置換アダマンタンと二分子のビフェニレンスペーサーを酸素原子で連結した六角形型環状分子を合成しているが、二置換アダマンタンにフェニル基を導入した、サイズの大きな環状分子の合成と置換基導入も成功している。(2)に関して、多様な置換基導入可能な環骨格として、これまでに八つのヒドロキシ基を有する筒状の六角形構造と、四つのヒドロキシ基をもつひし形構造を合成している。それぞれの環骨格のサイズの拡張や金属の導入のほかに、アルキル基、プロパギル基、エステル基の導入、エチレングリコール鎖やπ系分子などの機能性分子の連結によって、環状分子ライブラリーを作製した。これらのラリブラリーを活用して、環骨格や置換基、溶媒・温度によって、膜構造、サイズ・安定性、形状が異なる中空球状ナノ粒子群の構築を実現した。 以上の結果・知見は、昨年度の目標をおおむね達成しており、次年度以降の機能性中空ナノ粒子群の作製と動的挙動、機能開拓に向けて、重要な知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度以降は、環状分子ライブラリーを用いて、各種溶液中で自己集合させることにより多様な中空ナノ粒子群を作製し、DLS・SEM・TEM・XRDを用いて構造解析を行う。また、環状分子の骨格や機能性官能基の種類が、中空ナノ粒子の膜構造・サイズ・膜厚・安定性・耐久性にどのような影響があるのか系統的に調査する。さらに、複数の環状分子の混合による多成分系中空ナノ粒子の作製に取り組み、マルチラメラ構造などの高次構造や階層構造の構築に取り組む。上記の中空ナノ粒子群の知見を活用して、外部刺激(酸・塩基、温度、溶媒、光、ゲスト分子添加)によるナノ粒子の構造・形態変化や相転移の動的挙動を以下の点を中心に調査する。(1)酸・塩基やゲスト分子の添加による中空ナノ粒子のサイズや膜厚の構造変化およびコロイド状ナノ微粒子への形態転換。(2)フェロンセンやアゾベンゼンを連結した環状分子の酸化還元反応、光照射を通じた可逆的な中空ナノ粒子のサイズの改変および形態変化。(3)溶媒の極性や温度変化による中空ナノ粒子の構造・形態変化に加え、その経時変化を調べ、中空ナノ粒子の時空間ダイナミクスについて研究する。(4)ナノ粒子表面上のゲスト分子の認識を通じた、ナノ粒子のネットワーク化などの高次構造や階層構造の構築。(5)環状分子へのキラル官能基導入による、光学活性な中空球状ナノ粒子の作製。(6)同一の中空ナノ粒子から、複数の外部刺激に対応した構造・形態変化するマルチ動的システムの開発。
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Research Products
(7 results)