2017 Fiscal Year Research-status Report
フェルスター型エネルギー移動を利用した新規高輝度赤色蛍光分析試薬の開発
Project/Area Number |
16K05805
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
川上 淳 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (60261426)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 蛍光分析試薬 / 赤色蛍光色素 / 高輝度 / フェルスター機構 / エネルギー移動 / FRET / トリプタンスリン / BODIPY |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、生命科学の研究で用いられる蛍光分析試薬の重要性が増している。特に、ヘモグロビンや水の吸収の影響を受けない650 nm~900 nm のいわゆる“生体の窓”と呼ばれる波長領域で発光する近赤外蛍光試薬が注目されている。特に、人間の目で見ることのできる650 nm~800 nm の赤色蛍光試薬が扱い易い。しかし、従来の蛍光試薬は水環境中では蛍光量子収率(Φf)の値が小さく輝度(明るさ)が足りないという欠点がある。そこで本研究では、輝度が Φf とモル吸光係数(ε)の積(Φf・ε)に比例することに着目し、εの値の大きな発色団(エネルギードナー,D)と赤色蛍光を示す発色団(エネルギーアクセプター,A)との間のフェルスター型エネルギー移動(FRET)を利用した“高輝度”赤色蛍光分析試薬の開発を計画した。平成29年度は、大きなεの値を有する蛍光色素のBODIPY 誘導体と分子内電荷移動(ICT)性の蛍光色素であるトリプタンスリン誘導体をスペーサーのポリエーテル鎖でつないだ幾つかの系の合成に成功し、その分光学的性質について調べた。その結果、両蛍光色素間での分子内FRETを確認し、溶媒極性によって、DとAが入れ替わることを示唆する結果等を得た。また、幾つかの新たなBODIPY誘導体とトリプタンスリン誘導体を合成し、その分光学的性質と金属イオンやpHに対する蛍光応答性についても調べ知見を得た。2-ヒドロキシトリプタンスリン及びその誘導体の金属イオンに対する蛍光応答性については論文にまとめ日本MRSの英文学術誌Transactions of the Materials Research Society of Japanに投稿し、来年度早々の掲載が決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、平成28年度中に合成に至らなかったBODIPY誘導体とトリプタンスリン誘導体をスペーサーでつないだ系の合成に成功し、分子内FRETに関する幾つかの知見をえることに成功した。また、新たに合成したBODIPY誘導体とトリプタンスリン誘導体の金属イオンやpHに対する蛍光応答性についての知見も得ており、おおむね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度の平成30年度は、BODIPY誘導体とトリプタンスリン誘導体をスペーサーでつないだ種々の系を合成し、スペーサーの長さや励起波長の違いによる分子内FRETへの影響等を明らかにしていく予定である。また、金属イオンやpHに対する蛍光応答性について調べ知見を得ることでフェルスター型エネルギー移動を利用した高輝度赤色蛍光分析試薬を完成させたいと考えている。
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Causes of Carryover |
理由:物品の調達方法の工夫や所属機関の校費利用などにより、当初計画よりも経費の使用が節約できたため。 使用計画:過度に節約することなく、翌年度分として請求した助成金と合わせて研究遂行のために適切に使用する計画である。
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