2017 Fiscal Year Research-status Report
MOFを基材としたテラヘルツ化学アナライザーの高感度化
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16K05806
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
丹野 剛紀 秋田大学, 地方創生センター, 准教授 (70390721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 学 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (90588477)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | テラヘルツ分光 / 金属有機構造体 / ガス吸着 / キラル識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属有機構造体(MOF)へ各種ガスを交互に導入し,テラヘルツ吸収スペクトルの変遷を調べる実験を行った.まず,この実験のためにMOFをガスに暴露するガスフローセルを構築した.具体的には,MOFをテラヘルツ波に対して透明な面部連フィルタ上に堆積させ,それをテラヘルツ帯で透明な窓とガス流路を備えた密閉容器(ガスフローセル)に入れ,テラヘルツ分光装置内に置き,ガスを流しながら分光測定が行えるようにした.フローセルの容積をなるべく小さくすることで,あとに求めることになる反応の時定数の精度が高くなるようになっている. MOFとしては主にZIF-8を採用し,アルカンや二酸化炭素などのエネルギー関連ガスの吸着特性を体系的に調べた.そして,特に変化の大きい周波数における透過強度の時間変化を記録し,応答プロファイルを得た.そこから,プロパンやn-ブタンのZIF-8への吸着の時定数をもとめ,吸着過程の熱力学的考察を進めた. キラルなMOFによる不斉識別実験では,実際にキラルなゲストがキラルなMOFに包接される系を複数見出した.これらの系では,溶液中で効果的に包接が進むが,テラヘルツ分光で測定が可能なように乾燥し粉末化する過程でゲストが散逸している可能性があり,湿潤したままスペクトル計測を行う方策などを検討している.同時に,乾燥に対して安定な系の探索も並行して続けている. テラヘルツ分光装置の光学系は,焦電型ディテクタの変更によりシグナル/ノイズ比が向上したものの,シグナル自体は期待したよりも弱く,結果としてデータの精度も期待した程度には向上しなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルカンや二酸化炭素などのエネルギー関連ガスのZIF-8への吸着特性を体系的に調べ,特に変化の大きい周波数における透過強度の時間変化を記録し,応答プロファイルを得た.この結果は国内学会で発表したほか,査読付き学術論文に投稿し,受理・掲載された.さらに,そこからプロパンやn-ブタンのZIF-8への吸着の時定数をもとめ,吸着過程の熱力学的考察を進めた結果も国際会議や国内学会で発表したほか,査読付き学術論文に投稿し,3月中に受理されており,これらの研究内容は計画をやや上回って進展している. キラルなMOFによる不斉識別実験では,実際にキラルなゲストがキラルなMOFに包接される系を複数見出したが,乾燥・粉末化の過程でゲストが散逸している可能性があり,良好なテラヘルツ透過スペクトルが得られていない.これらの事情により,キラルMOFに関する研究はやや遅れている. テラヘルツ分光装置の光学系は,焦電型ディテクタを変更したものの,データの精度は期待した程度には向上しなかった.引き続き,集光部品の追加などを検討・実施し,得られるデータの精度や安定性の向上を図っていて,このことは研究計画よりもやや遅れている.また,本研究計画の他の部分にも影響することが危惧される. 以上の事情を総合し,全体としては「おおむね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
MOFへのガス交互導入実験を行い,テラヘルツ吸収スペクトルの応答を調べる実験では,メタン,エタン,プロパン,n-ブタン,二酸化炭素のZIF-8への吸着実験が完了しており,それぞれのガスを窒素またはアルゴンで希釈したときのZIF-8のテラヘルツ吸収特性の体系的な測定実験を始めたところであり,これを継続する. キラルなMOFによる不斉識別実験では,実際にキラルなゲストがキラルなMOFに包接される系を複数見出したものの,乾燥・粉末化過程でゲストが散逸している可能性があり,湿潤したままスペクトル計測を行う方策などを検討しながら,同時に,乾燥に対して安定な系の探索も並行して続けている.材料としては,引き続き,シクロデキストリンを骨格中にもつMOFを調製して用いる.ゲストとしてはおもにテルペン類を想定しており,適宜,これら以外の物質も試しながら,なるべく多くのMOFとゲストの組み合わせを探索し,テラヘルツ分光によってゲストのキラリティが判別できる系の発見を目指す.また,そのようにMOFに吸着することでテラヘルツ吸収スペクトルにエナンチオマ間で差異が生じる系と生じない系の違いは何なのかを考察し,その結果を参考にしながら,より好適な系の探索を目指す. テラヘルツ分光装置の光学系は,集光部品の追加や,信号配線の低ノイズ化のための改修などを検討・実施し,得られるデータの精度や安定性の向上を図る.
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Causes of Carryover |
主に試薬など物品の価格変動により次年度使用額が生じた.次年度の試薬の購入に充て,実験対象を広げる.
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Research Products
(5 results)