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2017 Fiscal Year Research-status Report

シンクロトロン放射光を用いるドープ氷中電解質のキャラクタリゼーション

Research Project

Project/Area Number 16K05809
Research InstitutionTokyo Institute of Technology

Principal Investigator

原田 誠  東京工業大学, 理学院, 助教 (60313326)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2019-03-31
Keywordsドープ氷 / 凍結濃縮 / XRF / XAFS
Outline of Annual Research Achievements

電解質水溶液を凍結させるとドープ氷を生じるが、微視的には純氷微結晶とそれらの隙間であるグレインバウンダリーに濃縮された電解質水溶液で構成される。このような凍結濃縮は凍結時の電解質の濃度と種類、およびドープ氷の温度によって濃縮率を調整できる。本研究では、凍結濃縮によって水溶液中の溶存物質を高感度検出する手法について検討を行った。
ドープ氷中の電解質の分布状況はXRFによるマッピングで観測した。XRF測定は高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設にて行った。ペルチェユニットを組み込んだ氷温測定セルを作成し、種々の硝酸塩を微量含むNaCl水溶液の測定を行った。
XRFによるマッピング測定結果から、Znが高濃縮していると思われるサイトでXAFSスペクトルを測定した。Clはグレインバウンダリーの液相と一致しているとみなすと、Znは液相の分布とは異なるサイトで高濃縮していた。XAFSスペクトルから判断すると、高濃縮されたサイトのZnは固体のZnOのスペクトルとよく一致し、グレインバウンダリーの一部ではZnOとなって濃縮されていると思われる。MnやCoはClの分布と一致しており、この両者は水和構造であることがXAFSスペクトルから明らかとなった。Znは高濃縮サイトではZnOとなっているものの、水和構造やZn(OH)2タイプも観測されており、Znイオンが凍結濃縮による影響で水和構造からZn(OH)2へさらにはZnOへと構造変化を起こす可能性があることが示唆された。但しこのような構造変化は一部であり、ドープ氷中のほとんどのZnは水和構造であった。ドープ氷にキャピラリーを用いて細孔を作成したところ、細孔にはグレインバウンダリーから液相が流入していくことがXRFによって観測された。実際にこの細孔から注射器で濃縮された水溶液を取り出すことができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

放射光施設を利用したドープ氷のXRF測定による氷中での各金属元素の分布と金属イオン濃縮サイトでのXAFS測定を実施した。特にZnイオンのドープ氷中での状態変化について、これまでは高濃縮されたサイトで水和状態ではないと見なされるXAFSスペクトルが観測されていたが、今回の実験では、水和状態、Zn(OH)2構造、ZnO構造の三種およびその中間体と思われるXAFSスペクトルを観測でき、これらの構造を持つZnはドープ氷中で液体状態の水がZnの周囲にどの程度存在しているかに依存していることを突き止めた。つまり、ドープ氷中での濃縮率によってZnの構造が変わっていることをつきとめている。
ドープ氷中にサブミリメートル程度の細孔を穿っておき、-5℃程度の共晶点以下に維持しておくと、ドープ氷中に分散していた液相が徐々に細孔内に流入し、ドープ氷で濃縮された液相を一カ所に集めることに成功している。収集した液相を取り出したり、あるいは固定して観測できれば、ドープ氷の濃縮作用を利用した高感度化が実現できることが確認できている。

Strategy for Future Research Activity

ドープ氷によって高濃縮された液相に微量溶質が濃縮されているか、温度制御による濃縮率は相図から見積もった濃縮率と対応しているか検討する。
これまではキャピラリーによる細孔をドープ氷に作成して濃縮液相を収集したが、濃縮液相を効率よくドープ氷から取り出すような細孔の工夫を行う。細孔近傍からは流入しやすいが、細孔から離れた液相は移動に時間が掛かることがXRFによって観測されている。
グレインバウンダリー以外の氷相に微量溶質が存在しているか、存在している場合、どのような構造か、XAFS測定によって検討する。グレインバウンダリー以外の氷相を拡大するため、NaCl水溶液を純粋氷である単結晶氷として調製し、この単結晶氷に塩が含まれているかXRF測定する。すでに水溶液の単結晶氷を調製しているので、できるだけ速やかにシンクロトロン放射光施設を利用してXRF測定、およびXAFS測定を実施する。

Causes of Carryover

前年度に購入予定だったZステージを購入する必要がなくなり、Zステージの代用として作成する治具を前年度中に作成できなかったため。すでに設計が終わり、工作中である。

  • Research Products

    (3 results)

All 2017

All Presentation (3 results)

  • [Presentation] 氷にドープした金属イオンの局所構造2017

    • Author(s)
      原田 誠
    • Organizer
      第77回日本分析化学討論会
  • [Presentation] 凍結濃縮を用いる溶存物質高感度検出への検討2017

    • Author(s)
      原田 誠
    • Organizer
      日本分析化学会第66年会
  • [Presentation] ドープ氷に含まれるイオンの構造解析2017

    • Author(s)
      原田 誠
    • Organizer
      第20回XAFS討論会

URL: 

Published: 2018-12-17  

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