2018 Fiscal Year Research-status Report
シンクロトロン放射光を用いるドープ氷中電解質のキャラクタリゼーション
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16K05809
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| Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
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Principal Investigator |
原田 誠 東京工業大学, 理学院, 助教 (60313326)
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2016-04-01 – 2020-03-31
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| Keywords | XAFS / 単結晶 / 氷温 / ドープ氷 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
電解質水溶液を凍結させると、溶質を含んだいわゆるドープ氷となる。ドープ氷は巨視的にはあたかも氷構造に溶質が取り込まれたものに見えるが、微視的には溶質を含まない微結晶の純粋な氷とこの微結晶氷間の隙間に存在する水溶液相とに分けられる。溶媒である水が純粋氷に奪われるので、この液相には溶質が濃縮されることになる。これまではドープ氷中に含まれるイオンの分布状況や局所構造解析を行ってきたが、これらのイオンは濃縮液相に含まれるイオンに関する情報であった。先行研究で、「純粋氷」はイオンを全く含んでいないわけではなく、濃縮液相と比べるとわずかではあるが、純粋氷に取り込まれたイオンが存在することが分かっている。この純粋氷に取り込まれたイオンの局所構造を解析するには濃縮液相を取り除いた氷のみを作成する必要がある。ドープ氷から濃縮液相のみを除くことは困難である。よって電解質水溶液から単結晶氷を作成することで、濃縮液相のない氷を調製した。基本的には単結晶氷は溶質を排除して結晶成長するが、イオンを取り込んだ単結晶氷ができれば、ドープ氷の微結晶と類似したものとみなすことができる。このようにして調製した単結晶氷を高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設BL9A、BL12Cにて蛍光XAFS測定を行い、局所構造解析した。試料として塩化カリウム水溶液水溶液を単結晶氷の材料とした。測定したXAFSスペクトルに対し、単結晶氷中でのイオン周囲の構造についてGaussian16による分子軌道計算を行い、取り得る可能性のある構造をシミュレートした。その結果、塩化物イオンはバルク水溶液中では6配位構造を取るが、氷中では4配位構造となっている可能性が高いことがわかった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
氷中でのイオンの局所構造について、ドープ氷内の濃縮液相中に存在する場合、そして氷中に取り込まれた場合と、ドープ氷内での存在位置の違いをXAFS測定およびXRFによるマッピングを用いて解析した。ドープ氷内の水相の分布と濃縮機能を明確にするため、ドープ氷調製する水溶液を塩化ナトリウムをベースとし、マンガン、コバルト、銅、亜鉛の硝酸塩を微量含む水溶液を用いたが、凍結により銅イオンと亜鉛イオンが特異な構造変化を起こしていることを見出した。当初はこれらの金属イオンは濃縮液相に水和したイオンとして存在すると考えていたことから、X線照射によって放出する蛍光X線が観測深さが異なることを利用して水溶液相の分布状況を推測することを考えていたが、実際には亜鉛イオンは水和ではなく酸化亜鉛になっていることがわかった。
また、イオンを含んだ単結晶氷では、蛍光法によって測定したXAFSスペクトルがノイジーで、良好なスペクトルを得ることが困難であった。これは本来、単結晶氷に含まれるイオン自体がわずかであること、測定対象であるイオンがカリウムイオン、塩化物イオンと一般的なXAFSと比較して軽元素であり、観測される蛍光X線の測定にはヘリウム雰囲気に置換し、かつ雰囲気が安定している必要があること、試料が氷であり、氷温を維持する必要があることなどの理由が挙げられる。よって繰り返し測定を行うなど、データの信頼性を上げる必要があった。
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| Strategy for Future Research Activity |
現在、単結晶氷については期間延長を認めていただいた今年度（2019年度）中にXAFSスペクトルを高エネルギー加速器研究機構の放射光施設にて再測定し、解析可能な良好なデータを得る予定である。また、XRFによって見積もった各元素の分布状況を基に、より正確な分布位置を推測している。これらの結果がまとまり次第、学会発表や論文発表により報告する予定である。
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| Causes of Carryover |
高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設にて前年度中に測定した単結晶試料を再測定する必要があり、その費用と論文発表する費用を繰り越している。
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Research Products
(4 results)
