2017 Fiscal Year Research-status Report
核酸の自発的連鎖反応を利用した高感度腫瘍細胞検出法の開発
Project/Area Number |
16K05819
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
北村 裕介 熊本大学, 大学院先端科学研究部, 助教 (80433019)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | アプタマー / 血中循環腫瘍細胞 / 細胞捕捉 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんが進行すると、一部の腫瘍細胞が原発腫瘍細胞組織から剥離し、血液やリンパ液の流れに乗り、体内の別の臓器に移動することで 癌の転移が起こる。このように血流に乗って体内を循環している腫瘍細胞は、血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell: CTC)と呼ばれている。単位血液量中に含まれるCTC数は、がんの悪性度や術後の生存期間に強い相関が認められており、近年、新たながん診断マーカとして注目されている。本研究では、多くの固形癌種の細胞膜上に過剰発現している膜タンパク(EpCAM)に対するアプタマ ーを金基板表面に修飾し、これを用いてCTC等のがん細胞の特異的捕捉及び高感度検出を目的とした。昨年に引き続き、特異的にがん細胞を捕捉可能な基板修飾条件の最適化を行なった。金基板表面に末端チオール化アプタマーを金-チオール結合にて修飾した。 その後、基板への非特異的な吸着を抑制するために、残余表面を6-メルカプト-1-ヘキサノールで修飾し、SAM膜を形成した。修飾基板上に核をHoechst33342で染色したがん細胞(MDA-MB-453:ヒト乳癌細胞)、正常細胞(HEK293T:ヒト胎児腎細胞)を加え、一定時間インキュベートした。洗浄後、顕微鏡で観察し、細胞数を比較した。結果、MDA-MB-453が選択的に捕捉されることがわかった(MDA-MB-453: 168 cell/mm 2、HEK293T: 2 cell/mm2)。また、蛍光色素修飾アプタマーによって、がん細胞が特異的に染色されることも確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞捕捉基板の最適化は順調に進行しているが、DNAサーキットを用いた細胞検出シグナル増幅への着手が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究における腫瘍細胞検出システムの概要は以下のとおりである。1、金基板表面に末端チオール化アプタマーを金-チオール結合にて修飾する。その後、基板への非特異的な吸着を抑制するために、残余表面を6-メルカプト-1-ヘキサノールで修飾し、SAM膜を形成する。2、サンプル溶液(例えば腫瘍細胞を含む血液)を修飾基板上に滴下し、腫瘍細胞を選択的に捕捉する。3、洗浄後、タグ付けしたアプタマーを、捕捉した細胞に結合させる。再度洗浄後、シグナル増幅のトリガーとなる一本鎖(トリガーDNA)とその相補鎖(マスク DNA) から成る二本鎖(ケージドトリガ ー。タグに応答して解離し、トリガーDNA を放出する)とプローブの混合溶液を滴下する。4、放出されたトリガーDNAがプローブに作用し、シグナルが増幅される。 トリガーDNA とマスク DNA 二本鎖が形成する二本鎖は突出した一本鎖領域(toehold)を有しており、これをきっかけとし、鎖交換反応が起こり、タグ付きアプタマーのタグの部分とマスクDNA がより、安定な二本鎖を形成し、結果、トリガーDNA が放出される。放出効率の最適化時には、まずは細胞を用いず、蛍光色素ラベル化トリガーDNA と消光剤修飾マスク DNA から形成される二本鎖に対してタグ付きアプタマーを添加し、蛍光回復量、速度からトリガーDNA の放出効率を評価している段階である。トリガ ーDNA/マスクDNA 二本鎖のtoehold 長がトリガーDNA の放出に最も影響を与えると考えられるため、 これを微調整し、最適化を行う。また、温度や塩濃度などのパラメーターも最適化する。今後は、細胞上でDNAサーキットを動作させていく予定である。
|