2016 Fiscal Year Research-status Report
反応性コア-シェルクラスターイオンビームの生成と有機無機複合材料分析への応用
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16K05821
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
盛谷 浩右 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (20391279)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 質量分析 / クラスター / スパッタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、クラスターイオンビームをスパッタ銃として用いるため、十分な速度でスパッタできるだけのビームの強度を確保しつつ、高いビーム強度安定性が求められた。そのため本年度は、これまでに立ち上げを行ってきたコンパクト型GCIB装置に、連続ビームのまま高質量クラスターの高分解能質量分離が可能な回転電場方式マスフィルター(REF-Mass)を接続し、装置調整を行った。 最初に、従来型のTOF方式と回転電場方式によるクラスターサイズの選別を試みた。Ar+~Ar4000+に相当する質量範囲で、クラスターイオンの質量分布を測定したところ、良く似たクラスターサイズ分布が測定できることがわかった。ただし、TOF方式ではビームをパルス化するという実験的な制約があるため、クラスターのチョッピングに必要なパルス幅およびアンプの時定数のため、クラスター質量分布のピーク位置が20000 Da以上ずれていることがわかった。一方、REF方式ではビームのパルス化という実験的な制約がないため、正確なクラスターサイズが測定でき、さらに、低質量の成分も正確に測定できる。これは、1原子当たりエネルギーを低エネルギーから高エネルギー側まで精密に制御するために重要な知見である。また、ビーム径φ5 mmで実験を行ったところ、TOF方式ではビームのパルス化のため強度が弱くなるが、REF方式では実効的にTOF方式の75倍のビーム強度が得られることがわかった。ただし、TOF以上の質量分解能を確保するために、ビームをφ0.2 mm以下に微細化したところ、質量分解能は、半値幅でM/dM=40以上の高い分解能が得られたがビーム強度も低下するため、今後さらにビーム条件を調整していく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、REF-Mass搭載型GCIB装置の立ち上げ調整に時間を費やした。試作型REF-Massの、特に電源・制御系の不安定性のため、当初想定以上の時間を費やした。得られた成果としては、世界で初めてREF-Massで連続ビームのままクラスターの質量分離を行った点が挙げられるが、ビーム調整に時間がかかり、現時点で当初目標のTOF法のビーム強度100倍以上に到達していない。(現時点で75倍)また、質量分解能に関してもM/dM=10程度が精一杯であったTOFに比して、40以上(最大86)の高分解能が見込まれるが、装置の不安定性のため、本年度内では安定して運用するには至らなかった。これらの立ち上げ調整に、当初想定以上の時間を費やしたため、クラスター構造に関する調査とそのための装置調整まで至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、試作型REF-Massの電源・制御系の不安定性のため、実験に当初想定以上の時間を費やしている。連続ビームでの質量分離という点では、質量分解能は大幅に劣るが、まずは技術的にも古典的で、制御もダイナミックに行う必要がないため安定して運用できるウィーンフィルターによる質量分離を行い、粗い質量分離状態でまずはデータを取得することを検討している。そのためのウイーンフィルターの設計はすでに行っている。 その後、GCIB装置に、イオン種検出用のTOF管を取り付け、エネルギーを調節した電子ビームパルスに同期して発生する解離イオンの飛行時間計測を行う。また、これまでに開発してきたGCIB-SIMS/XPS装置を用い、有機無機複合型材料スパッタリングに最適な混合クラスターイオンビームの照射条件を検討する。有機および無機材料試料混合クラスターイオンビームを照射し、SIMSとXPSにより試料のスパッタ過程を測定する。スパッタ速度は触診式段差計により見積もり、ビーム照射条件を最適化する。この段階で問題点を洗い出し、エネルギーやクラスターサイズおよび最適な希ガス-液体混合比を有機無機複合型材料用に最適化する。また、より高強度の混合クラスターイオンビームを発生できるよう、イオン源およびクラスター源を調整する。
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Causes of Carryover |
本年度は、REF-Mass装置の不安定性のため、立ち上げ調整実験に当初想定以上の時間を費やしたため、クラスター構造に関する調査とそのための装置調整まで至らず、そのための装置改造費用等に残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、これまでに立ち上げ調整を行ってきたGCIB装置に、イオン種検出用のTOF管を取り付け装置調整と、クラスター構造に関する調査を行う予定であり、そのために使用予定である。
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