2018 Fiscal Year Research-status Report
反応性コア-シェルクラスターイオンビームの生成と有機無機複合材料分析への応用
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16K05821
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
盛谷 浩右 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (20391279)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 二次イオン質量分析法 / クラスターイオンビーム / スパッタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
分子クラスターによるスパッタリング体積を精密に求めるためにクラスターイオンビーム発生装置に改造を施した。特に、偏向電極を設置し偏向電極に印加する電圧に周期的な変調をかけることでビームをスキャンできるようし、またマスキング用のビームアパーチャーを設置した。この結果、スパッタ痕形状が円錐台形で、スパッタ痕底部を表面粗さ15 nm以下の平坦さで均一にスパッタリングすることができるようになった。この装置を使用して、まずArクラスター照射による有機材料および無機材料のスパッタリング実験を行った。スパッタ体積は光学顕微鏡によりスパッタ形状を確認した後触診式段差計を用いて測定、または白色光干渉計により測定し、それぞれのスパッタ速度を見積った。有機材料にはPMMAを、無機材料にはシリコンを用いた。その結果、Arクラスターイオンビームによるスパッタリングでは、無機材料のスパッタ速度は有機材料と比べて二桁以上小さいことがわかった。またスパッタリング速度のビーム加速エネルギー依存性を調べた。これらのデータは、今後分子クラスターおよび混合分子クラスターのスパッタリング速度およびスパッタメカニズムを検討する際の基礎的な知見となる。しかしながら、本年度はイオンビーム装置のイオン銃電源、および複数台のターボ分子ポンプの故障が続けて発生し何度かの実験中断期間を挟まざるを得なかったため、実験に当初想定以上の時間がかかった。そのため、分子クラスターおよび混合分子クラスターでのスパッタリング実験までは行えなえず、次年度の課題として残った。今後は電源および排気系が回復次第、分子クラスターによるスパッタリング実験を行い、有機無機複合型材料スパッタリングに最適な混合クラスターイオンビームの照射条件を検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、クラスターイオンの分子種、混合比、エネルギーを精密に調整したスパッタリング実験から、有機無機材料のスパッタリングに最適なクラスターイオンビーム照射条件を詳細に検討する予定であった。しかしながら、これまで立ち上げてきたイオンビーム装置のイオン銃用高圧電源および排気系(ターボ分子ポンプ2台)に故障が発生し数回の実験中断を余儀なくされたため、分子クラスターでの詳細なスパッタリング実験までは行えなかった。排気系の故障は経年によるものと考えられる。電源の故障原因は現在調査中である。実験中断期間中はスパッタリング速度をより正確に求めるための装置改造等を行っており、装置が復帰次第、分子クラスターおよび混合分子クラスターでのスパッタリング速度を詳細に検討し有機無機材料スパッタリングに向けたビーム条件の最適化を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は実験に用いるイオンビーム装置に故障が発生した。故障した電源および排気系が回復次第、分子クラスターおよび混合分子クラスターでの詳細なスパッタリング実験を行い、有機無機材料スパッタリングに向けたビーム条件の最適化を行っていく。混合分子クラスターの発生条件などは本年度までに調べている。また、スパッタリング速度に関しては、本年度装置改造を行い前年度よりも精密に求められるようになっている。スパッタリング体積を触針式段差計および白色光干渉計で測定できることは確認できており、今後さらに詳細な条件(分子種、混合比、エネルギー)でのスパッタリング速度を精密に測定していく。また、イオン化チェンバーに設置する真空計を汚染耐性が強いタイプのものに交換しており、分子クラスターを生成してもイオンビーム装置を安定して運用できるようになっている。これまでに開発してきたGCIB-SIMS/XPS装置も排気系が故障から回復次第、接続・調整を行い、有機無機複合型材料スパッタリングに最適な混合 クラスターイオンビームの照射条件の検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
イオンビーム装置のイオン銃電源、および経年によるターボ分子ポンプ(2台)の故障が発生し何度かの実験中断期間を挟まざるを得ず当初想定以上の時間がかかったため、分子および混合分子クラスターでのスパッタリング実験までは行えなかった。そのため、そのスパッタリング実験用の試料作製費、試料ガス費などが当初予定と異なった。本年度は遅延していたスパッタリング実験を行っていくため、残額をスパッタリング実験用の試料作製費、試料ガス費などに充当する計画である。
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