2016 Fiscal Year Research-status Report
リン脂質への選択性を飛躍的に向上した抽出法の開発とターゲットリピドミクスへの応用
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16K05828
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
巴山 忠 福岡大学, 薬学部, 准教授 (90549693)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フルオラス / 金属キレートアフィニティー抽出 / リン脂質 / 液体クロマトグラフィー/質量分析計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、リン脂質の選択的分析を行うべく、パーフルオロアルキル基同士の特異的な親和性(フルオラス)を利用した新しい抽出法の開発を試みている。本法の原理は、パーフルオロポリエーテル構造をもつフルオラスカルボン酸(Krytox)にZn(II)を固定化し、さらにそのZn(II)にリン酸基を配位させることで、得られた複合体(リン脂質を含む)をフルオラス溶媒中に選択的に抽出することに基づく。 今回、モデル化合物として、スフィンゴシルホスホコリン(SPC)及びスフィンゴシ ン-1-リン酸(S1P)を用いて基礎検討を行った。抽出手順は以下のとおりである。試料溶液に、クロロホルム、0.2%トリフルオロ酢酸(メタノール溶液)、水 Zn(II)固定化Krytox溶液(テトラデカフルオロヘキサン溶液)を加えて室温で振とう。遠心分離後,、上層を除去し、下層(フルオラス層)を洗浄後、2%トリフルオロ酢酸(80%メタノール溶液)を加えて逆抽出。遠心分離後、上層の一部(5 μL)をLC-MS/MSに注入。本抽出法により、SPC及びS1Pは定量的に抽出された。また,、リン酸基を有していない脂肪酸(パルミチン酸及びステアリン酸)についても同様の抽出を行ったところ、抽出はされなかった。以上の結果から、本法がリン脂質に対して選択性を有していることを確認することができた。なお、本法におけるSPC及びS1Pの回収率は85%~92%の範囲であり、再現性についても良好な結果を得ることができた(RSD<9.0%)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要のとおり、本法により、今回リン脂質のモデルとして用いたSPC及びS1Pの抽出が可能であったこと、並びにリン酸基を有していない脂肪酸は抽出されなかったことを確認している。従って、目的のとおり、フルオラスの親和性を利用することで、リン脂質を選択的に抽出できることを証明できており、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらにモデル化合物を増やし、抽出方法・手順を最適化していくこととする。その後、実試料への適用を検討し、ターゲットリピドミクスを行うための基盤を整備していくこととする。なお、実試料へと本法を適用した際、抽出法に問題が生じた場合は、適宜、検討を行い、方法を修正していくこととする。
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Causes of Carryover |
本年度は、本研究の基礎検討を中心に実験を行っていた。リン脂質のモデルとして使用した化合物も2種類であり、先ずは開発する抽出法の原理確認を優先して行った。そのため、消耗品費などの使途が限られてしまい、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度より、実験に使用するモデル化合物を増やし、さらなる検討を行っていくとともに、実試料への適用を検討する。研究費のほとんどは、標準品を含む試薬や溶媒類、実験器具類などに充てる予定であり、その他、成果発表のための学会旅費として使用することとする。
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Research Products
(10 results)