2017 Fiscal Year Research-status Report
リン脂質への選択性を飛躍的に向上した抽出法の開発とターゲットリピドミクスへの応用
Project/Area Number |
16K05828
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
巴山 忠 福岡大学, 薬学部, 准教授 (90549693)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リン脂質 / フルオラス / アフィニティー抽出 / 液体クロマトグラフィー/質量分析計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、パーフルオロアルキル基同士の特異的な親和性(フルオラス)を利用し、リン脂質の新規かつ選択的抽出法の開発を試みている。前年度までに、Zn(II)を固定化したパーフルオロポリエーテルカルボン酸(Krytox)を用い 、金属キレートアフィニティー抽出の原理により、リン脂質をフルオラス溶媒中に選択的に抽出する方法を構築した。さらに、モデル化合物として、スフィンゴシルホスホコリン(SPC)及びスフィンゴシ ン-1-リン酸(S1P)を用いて基礎検討を行ったところ、それらの選択的な抽出が可能であり、LC-MS/MSにて高感度に測定可能であることを示した。今回、測定対象を拡張すべく、ホスファチジルコリン (PC) 、ホスファチジルエタノールアミン (PE) 、ホスファチジルグリセロール (PG) 、ホスファチジルセリン (PS) 、ホスファチジン酸 (PA) 、スフィンゴシル-1-リン酸 (S1P) 及びスフィンゴシルホスホコリン (SPC) の7種のリン脂質を用いて抽出条件の最適化を行った。さらに、本法をヒト血清試料へと適用し、その有用性を検証した。その結果、本法により対象としたリン脂質類を抽出できることを確認し、さらに標準添加ヒト血清試料から対象としたリン脂質類を抽出することも可能であった。ただし、ヒト血清試料からの対象リン脂質の回収率は、66~159%の範囲内であったため、抽出条件の更なる検討が必要になるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載のとおり、本法により対象としたリン脂質の選択的抽出が可能であること、並びに実試料であるヒト血清試料への適用が可能であることを確認している。従って、当初目的のとおり、フルオラスの相互作用を利用したリン脂質の新規かつ選択的な抽出法の基礎的条件は構築できており、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、抽出方法・手順をさらに最適化していくこととする。さらに本法のリン脂質に対する選択性を詳細に検討すべく、ヒト血中に含まれるその他の脂質類(アシルグリセロールやコレステロール混練物質など)を用いた検討をも行っていくこととする。また、実試料としてヒト血清試料への適用例を増やしていき、さらにはリピドミクスを行うべく、何らかの病態モデル試料へと本法を適用していくものとする。
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度は、概ね順調に研究を遂行することができたため、助成金についてもほぼ計画通りに使用できたものと考えている。僅かに次年度使用額が発生したが、研究遂行に支障はないものと考えている。 (使用計画) 次年度は、対象とするリン脂質の成分数をさらに増やすとともに、抽出条件のさらなる最適化を行っていく予定なので、研究費のほとんどは、標準品を含む試薬や溶媒類、実験器具類などに充てるものとする。その他として、成果発表のための学会旅費、論文投稿費などとして使用することとする。
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Research Products
(12 results)