2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05831
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
廣田 憲之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (10302770)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 高磁場 / 可視化 / 熱対流 / 磁気力 / ローレンツ力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は物質に対して非接触で力学的影響を与えることのできる磁場の特徴を利用して、流体中で物質の流れを制御する技術を研究し、分析技術や各種プロセスの高度化へつなげることを目指すものである。このために、高磁場中での流体挙動の可視化と流体挙動のシミュレーション、及び、空間磁場の最適化設計を行なうことで、高磁場を利用した弱磁性流体挙動の制御技術の確立を目指している。平成28年度は、水溶液の熱対流や結晶の成長・溶解に伴って生ずる屈折率の2次元分布を高磁場下で利用可能なシャドウグラフ光学系とシュリーレン光学系を用いて可視化した。単一成分の溶液中に温度勾配が存在するケースについて、シャドウグラフ光学系を用いて可視化したところ、ローレンツ力に起因した対流の抑制効果が見られ、その程度が印加磁場強度に依存すること、勾配磁場においてはこの抑制効果に加えて磁気力の効果が重畳することが確認された。固液が共存する溶液内で結晶が生成・溶解する過程をシュリーレン光学系により観測した際には、溶液流が磁気力の影響を受けて変化する様子を確認した。弱磁性流体の磁場中挙動のシミュレーションに関しては、Navier-Stokesの式、熱伝導方程式、拡散方程式を連立させたモデルにより単一液相系で温度勾配・濃度勾配が存在するケースについて検討を始めている。その結果、鉛直方向では磁気力による熱対流の抑制効果が期待できるが、面内での温度分布があると、面内における磁場の空間分布によって対流が生じてしまうことなどが分かってきている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は高磁場中での流体挙動の可視化と流体挙動のシミュレーション、及び、空間磁場の最適化設計を行なうことで、物質に対して非接触で力学的影響を与えることのできる高磁場を利用した弱磁性流体挙動の制御技術の確立を目指している。平成28年度は、水溶液の熱対流や結晶の成長・溶解に伴って屈折率の2次元分布が生ずることを利用し、高磁場下で利用可能なシャドウグラフ光学系とシュリーレン光学系による可視化を通じて、磁気力とローレンツ力の作用を確認できており、シミュレーションも合わせて、高磁場下における流体挙動についての理解を深めることができた。現在までのところ、ほぼ当初予定していたスケジュール通りに進行しており、概ね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成28年度に得られた成果をベースとして、弱磁性流体の磁場中挙動の光学的観測については対象を多様化しつつ、シャドウグラフ光学系を用いた実験では、導電性弱磁性流体への高磁場効果について実験系内に温度勾配が存在する条件で、シュリーレン光学系を用いた実験では、液相のみでその内部に濃度勾配が存在するケースについて、引き続き、磁場を鉛直方向に印加し、磁場最大位置、磁気力最大位置(方向が反平行の2か所)について実施することで検討を深める。弱磁性流体の磁場中挙動のシミュレーションと最適磁場条件に関する検討では、引き続き実験条件に即したシミュレーションを実施し、実験結果との比較から解析を行うほか、固液共存系での固液界面近傍での濃度勾配に着目したシミュレーションも実施する。また、ここまでのシミュレーション結果に基づき、目的に応じた弱磁性流体挙動制御に適した空間磁場分布についても検討を進める。以上で得られた実験的な知見とシミュレーションを体系的に理解し、整理することで高磁場を利用した弱磁性流体挙動制御技術の確立を目指す。
|
Causes of Carryover |
高磁場中可視化に関する実験のための装置や治具について、既有の実験装置を生かしつつ、その一部を、既成の部品等を中心に置き換えて利用することで、比較的安価にこれを試作し、所定の実験を達成することができたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
フランスCNRS-LNCMIのProf. Eric Beaugnonと共同で高磁気力場中の流体の挙動に関する共同研究を行なっており、フランス側の観測系を用いることで高時間分解能での挙動観察等が可能になるので、高磁場中での流体挙動のより深い理解のために、共同実験を行なうための物品費、旅費等に使用する予定である。
|