2017 Fiscal Year Research-status Report
マラリア原虫エノラーゼにおいてヒトプラスミノゲンを活性化する部分配列の合成的研究
Project/Area Number |
16K05837
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
奥 浩之 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (20301749)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プラスミノーゲン / ワクチン / エノラーゼ / 原虫 / 熱帯熱マラリア / ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
マラリアは世界最大の感染症でありワクチン開発が強く求められている。我々は熱帯熱マラリア原虫エノラーゼの部分配列から設計したAD22ペプチドワクチンの臨床応用を指向した開発を進めてきた。本研究では、AD22ワクチンのユニークな作用機序解明を目的として、近年注目が集まっている病原体由来エノラーゼによるヒト線溶系活性化と宿主細胞への侵入促進機構を検証すべく、合成的な視点から研究を実施している。平成29年度は(1)複合体形成の結合定数測定(KD)、(2)プラスミン活性の反応速度論(S2251基質の加水分解パラメーターVmax, Km)について研究を行った。 (1)プラスミノーゲンとの結合に重要なエノラーゼ部分ペプチド(35残基)について、ELISA法により8-10残基配列まで絞り込みを行った。バイオレイヤー干渉法を用いて、35残基配列と10残基配列の結合解離速度を測定した。それぞれの解離定数はKD = 1.9×10-8 M, 3.6×10-8 Mと、何れも強い結合解離定数であるとわかった。 (2) 臨床検査で使用されるプラスミン特異的基質(S2251)を用いて、エノラーゼ部分ペプチドの添加によって発現するプラスミン活性測定(酵素反応速度)を行った。Lineweaver-Burk Plot による解析から、2種類のペプチド鎖(35残基, 10残基)の活性発現を比較すると、(a)ペプチド鎖はいずれも基質(S2251)と異なる部位へ相互作用してプラスミン活性が発現する;(b)基質の親和性には変化がない(Kmは変化しない);(c)加水分解反応に大きく影響する(Vmaxは35残基>>10残基)、と解釈することができた。 すなわち、エノラーゼ部分ペプチド35残基・10残基配列の結合解離速度は同じであるが、プラスミン活性化は大きく異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画当初は、ELISA法によるプラスミノーゲンとの結合に重要なエノラーゼ配列について絞り込みやAlanine Scanなど定性的な測定のみを行う予定であったが、結合解離定数や酵素反応速度定数など数値的に(マラリア原虫が宿主細胞へ侵入する際の分子メカニズムを)解析できるようになったため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では35残基配列をリポソーム表面に提示させた材料を作製し、マラリア原虫のモデルとして(マラリア原虫表面に提示された解糖系酵素エノラーゼがヒト線溶系を用いて)赤血球へ接着するメカニズムについて、モデル的な検証を行う予定である。
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Research Products
(10 results)