2016 Fiscal Year Research-status Report
サーマルプログラミングによる蛋白質ナノブロックの逐次的自己組織化基盤技術の開発
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16K05841
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
新井 亮一 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (50344023)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 人工蛋白質設計 / タンパク質ナノブロック PN-Block / 蛋白質工学 / 蛋白質安定性 / X線結晶構造解析 / ナノバイオテクノロジー / 超分子化学 / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、私達は、独自のヌンチャク型二量体人工蛋白質を利用した蛋白質ナノブロックを開発し、樽型6量体及び正四面体型12量体の超分子ナノ構造複合体の構築に成功した(JACS 2015)。さらに、複雑な構造を構築するためには、段階的に秩序だって自己組織化する技術の開発が必要である。そこで、本研究では、複数の温度で可逆的に熱変性・再生する蛋白質ナノブロックを開発し、サーマルサイクラーによる温度変化プログラミングにより逐次的に自己組織化させる基盤的技術を開発することを目的としている。これにより、蛋白質ナノブロックを利用して、より複雑で高度なナノ構造複合体を作製する独自の分子技術開発の可能性が広がり、ナノテクノロジーの発展への貢献が大いに期待できる。 そこで、まず、蛋白質ナノブロックによるナノ構造構築技術の高度化を図るために、異なる変性温度で可逆的熱変性するヌンチャク型二量体人工蛋白質の開発及び安定化機構解析を行った。特に平成28年度は、Tmが75℃と120℃の間のヌンチャク型二量体人工蛋白質を開発するために、以前の予備実験で同時に変異させた5つのアミノ酸のうち、1~2アミノ酸を個別に置換した変異体をそれぞれ作成し、発現精製後、CD測定により変性温度の測定を行った。その結果、変性温度が83℃、84℃、85℃、101℃の人工蛋白質変異体が得られ、WA20の75℃やSUWA (Super WA20)の約120℃とも変性温度が異なり、かつ可逆的熱変性が可能なヌンチャク型二量体人工蛋白質のラインナップの充実に成功した。また、今後、これらの変性温度の異なる変異体を合理的に設計開発するために、SUWA人工蛋白質のX線結晶構造解析に成功し、立体構造に基づいて熱安定化機構の理解が大きく進展した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画において平成28年度に予定していた、異なる変性温度で可逆的熱変性するヌンチャク型二量体人工蛋白質の開発及び安定化機構解析の実験はおおむね実施することができた。ここまでの研究成果を現在取りまとめ中で、これから論文を執筆するところである。また、いくつか予想以上の興味深い実験結果も得られているため、これらの結果については、今後、さらなる検討も必要と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
異なる変性温度で可逆的熱変性・再生する蛋白質ナノブロックを開発し、サーマルプログラミングにより逐次的に自己組織化する基盤技術を開発する蛋白質ナノブロックによるナノ構造構築技術の高度化の目的を達成するため、今後さらに、異なる変性温度で可逆的に熱変性・再構成する自己組織化蛋白質ナノブロックの開発や、サーマルプログラミングによる蛋白質ナノブロックの逐次的自己組織化ナノ構造構築及び構造解析を進めて、研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、現有や共有の設備や余剰の消耗品等を最大限に活用して研究を進めて、研究費の効率的な使用や節約に努めた結果、非常に費用対効果の高い成果を上げることができた。これは、基金制度の趣旨やメリットを活かして、限られた研究費を、研究期間全体を考えながら、メリハリを利かせて効果的に使用することを意識して努力した結果である。また、いくつか予想外の興味深い実験結果も見られたため、それらの結果をさらに追究して理解を深めることが必要であると考えられたので、28年度の本研究経費での学会参加発表や論文発表等を意図的に控えたが、今後、積極的に多くの学会参加発表や論文発表を予定しているため、その経費分を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額はH29年度請求額と合わせて、機器や試薬等の物品や学会参加に伴う参加費・旅費、論文の英文校閲や掲載料等に使用する予定である。
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Research Products
(34 results)