2016 Fiscal Year Research-status Report
新規収斂的ワンポットペプチド連結法による糖タンパク質の迅速合成と結晶構造解析
Project/Area Number |
16K05844
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡本 亮 大阪大学, 理学研究科, 助教 (30596870)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | N-ピバロイルグアニジン / ペプチドグアニジド / ネイティブケミカルライゲーション / ワンポット / タンパク質 / 化学合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、タンパク質の化学合成は、様々なタンパク質誘導体が得られる方法となっている。しかし、現行の化学合成法では、機能性タンパク質の平均的なサイズである、150アミノ酸残基を超えるサイズのタンパク質合成は容易ではなく、標的分子のサイズと、合成スケールには大きな制限がある。本研究では、このようなタンパク質化学合成の根本的な問題を解決するべく、ペプチド連結反応であるネイティブケミカルライゲーション(NCL)反応を、複数別々の容器で実施した後、これらを精製作業なしに連続的に混ぜ合わせることで、一挙に全長ポリペプチド鎖をくみ上げる、収斂的ワンポットペプチド連結法を開発と、糖タンパク質合成への応用および結晶構造解析を目標としている。 初年度は、申請計画に基づき、収斂的ワンポットペプチド連結法の中心技術である、位置選択的NCL反応を可能にするi) ペプチドC末端の反応性制御を可能とするペプチドグアニジド体、およびii)ペプチドN末端の適切な保護基の探索を行った。この結果、i)に関しては、申請者が新規に見出したN-ピバロイルグアジン(PivGu)が、ペプチドC末端に縮合した、ペプチド-N-ピバロイルグアニジド(ペプチド-PivGu)体が、NCL反応中には不活性であるとともに、ワンポットで活性な状態であるチオエステル体へと変換できる事を見出した。一方、ii) については、既知の光官能性保護基である4-(dimethylamino)phenacyloxycarbonyl (Mapoc)基 (Tetrahedron Lett. 1998, 39, 4987, ChemBioChem 2005, 6, 1983)がペプチド-PivGu体と併用可能である事を見出した。これらの知見を元に、本研究の合成標的である、エリスロポエチンの一部の配列を利用において、位置選択的NCL反応が可能である事を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は、収斂的ワンポットペプチド連結法の中心技術の検討であった。この結果、N-ピバロイルグアニジンを利用することで、NCL反応においてペプチド鎖の反応性の制御が可能であることとともに、さらに既知の光感応性保護基と併用することで、効率的に位置選択的なペプチド連結が可能である事を見出した。以上は、本研究で鍵となる収斂的ワンポットペプチド連結法を実施する上で、基盤となる知見であり、当初の計画通り、引き続きこれらを利用した、収斂的なワンポットペプチド連結の検討をおこなえる状況にある。また、当初の目標では、基盤技術の検討はモデルペプチドを利用する予定であったが、実際には合成標的である、エリスロポエチン(EPO)の一部の配列を利用して検討を行うことができた。今後もこのスタイルを継承し、実際に収斂的なワンポットペプチド連結の検討は、EPOのアミノ酸配列を利用し、その全合成を同時に検討して行く予定である。以上の結果は概ね当初の計画通りであり、予定通り検討が進行しているものといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目(平成29年度)は当初の予定通り、まずは初年度に見出した基盤的知見を利用し、本研究の鍵である、収斂的ペプチド連結法の確立を目指す。まずは29年中旬迄に、申請時に計画した合成法に乗っ取り、糖鎖をもたないEPOの全合成をモデルとして、収斂的ペプチド連結法を検討して行く予定である。申請時の計画では、29年度中旬より、糖鎖をもつEPOの合成を開始する計画をたてているので、基本的にはこの計画に準ずる予定である。しかしながら、収斂的ペプチド連結法の確立は本研究の鍵となるため、反応条件の最適化等については必要に応じて、継続的に実施する予定である。
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