2017 Fiscal Year Research-status Report
核共鳴非弾性散乱分光によるセンサー蛋白質の気体感知機構の解明
Project/Area Number |
16K05850
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
太田 雄大 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 特任講師 (70509950)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 核共鳴非弾性散乱分光 / ヘムタンパク質 / 共鳴ラマン分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸素結合型および一酸化炭素結合型のヘムタンパク質の核共鳴非弾性散乱分光解析で得た振動状態密度から、ヘムの分子構造と電子状態の相関について洞察を得るべく、ヘム鉄中心およびヘム近傍のタンパク質環境を取り入れたモデル分子について各種密度汎関数法による量子化学計算を行った。また、タンパク質内のヘム鉄の動力学的性質を明らかにするために、ヘム鉄と第一配位圏との結合の硬さを表す力の定数(Stiffness)およびヘム補因子全体と周辺タンパク質との相互作用の強さを表す力の定数(Resilience)について解析した。 核共鳴非弾性散乱分光データをよく再現できる理論レベルを見出すべく、各種密度汎関数法(密度汎関数の混合比についても検討)を用いた分子構造最適化と基準振動解析を行い、理論的に振動状態密度を求めた。本解析により、酸素結合型および一酸化炭素結合型ヘム鉄において、信頼できる基準振動モードを得た。その結果、これまで共鳴ラマン分光により帰属されてきたヘム鉄ー酸素伸縮バンドの帰属については、再考を要することが明らかになった。また、一酸化炭素結合型ヘムについては、直線型Fe-CO構造のみならず折れ曲り型の構造が存在しうることが示唆され、気体分子感知機構について重要な知見を得た。さらに、化学修飾したヘムタンパク質の振動状態密度の解析により、ヘム分子構造がその電子状態とタンパク質の動力学的性質に顕著な影響を与えることを明らかにした。 本研究は、酸素結合、貯蔵、運搬および酸素感知に関わるヘムタンパク質の構造化学および動力学を考察する上で、重要な洞察を与えるものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分光データの理論解析は順調であった。しかし、Spring-8での核共鳴実験のビームタイムを予定通りに獲得できなかったため、実験データ蓄積の上で遅れを生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
Spring-8の課題申請にて十分なビームタイムを獲得するには、当該施設を利用した研究成果の論文発表が重要と考えられる。したがって、早急に今年度の解析結果を論文としてまとめる。
|
Causes of Carryover |
Spring-8での実験に必要な消耗品経費が予定どおりに使用されなかったため、次年度使用額が生じた。次年度において、Spring-8での実験に必要な消耗品に使用する。また、理論解析を推進するために、コンピュータの導入やクラスターの構築を検討する。
|
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] A Mononuclear Nonheme Iron(V)-Imido Complex2017
Author(s)
Hong Seungwoo、Sutherlin Kyle D.、Vardhaman Anil Kumar、Yan James J.、Park Sora、Lee Yong-Min、Jang Soojeong、Lu Xiaoyan、Ohta Takehiro、Ogura Takashi、Solomon Edward I.、Nam Wonwoo
-
Journal Title
Journal of the American Chemical Society
Volume: 139
Pages: 8800~8803
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
-
-